くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

kurawan2015-04-13

アカデミー賞四部門受賞のアレクサンドル・ゴンザレス・イリヤトウ監督の話題作。なるほど「イミテーションゲーム」を抑えたのがわかるような独特の世界観と映像に、引き込まれる魅力のある映画でした。ただ、個人的には「イミテーションゲーム」の方がすきですが。

映画は隕石が落ちていく映像を捉えるところから始まります。画面が変わると、部屋で向こうを向いて、ブリーフ姿の男が、胡坐を書いて中に浮いている。いきなり、あっと思わせる映像、そして彼は普通に床におりたち、娘で付き人のサムからのメールを受け取る。

これが主人公リーガンで、かつてバードマンというヒーロー映画でスターだったが、いまや落ちぶれ、再起をかけて、自作、演出、主演の舞台を企画しているのである。冒頭から映像が一度もカットされるず、終盤までワンカットでカメラが彼を追っていくのが、この作品の最大の特徴である。

自室から外に出ると、そこは舞台袖、今にも、相手役と演技をしようというところだが、事故が起きて、相手役が負傷、いきなりトラブルが起こる。狭い廊下を縦横に彼を捉えながら、入れ替わって、脇の人物を追いかけ、さらに、リーガンに戻る。デジタルテクニックと、特撮、ドアなどを巧みに使って、一度も映像のカットなくストーリーが進んでいく。

代わりに入れたマイクという俳優が、これも問題人物で、リーガンを悩ませるばかり。さらに娘のサムのドラッグや、妻との離婚問題がからみ、リーガンはどんどん追い詰められる。時々、超能力のようにものを移動させたりする映像は、かつてのヒーロー像のイメージだろう。時々そのバードマンの声や姿が彼に語りかけるくだりもシュール。

追い詰められたリーガンは、舞台のクライマックスで、自分の顔を本物のピストルで撃ってしまい、鼻が吹き飛び病院へ。そこで、整形して回復するも、窓から飛び出す。入ってきた娘のサムが、あわてて窓を見下ろす、地面に彼がいなくてゆっくりと空を見上げる顔のアップでエンディング。なるほど、これはなかなかの逸品である。

カメラワークの面白さ、ストーリーの奇抜さ、斬新なテクニック。とはいえ、よく考えれば、かつてヒッチコックが「ロープ」で試みた演出ではある。しかし、さすがに、ここまで完成されれば、まさにファンタジーの世界へ到達した気がします。いい映画でした、アカデミー賞納得です。