くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「グッド・ストライプス」「やさしい女」(デジタルリマスタ

kurawan2015-06-05

「グッド・ストライブス=素晴らしき平行線」
淡々とした普通の日常を、いかにも今風の空気をにじませながら描いていく物語ですが、どこか惹かれる、なんか好きになる、そんな映画でした。監督は岨手由貴子。

映画は、交際四年目を迎え、どこか、マンネリ気味のカップル緑と真生のある夏の日に始まる。もしかしたらこのままだと別れてしまうような、そんなごく自然すぎる流れを感じていた中、真生はしばらくインドに出張することに。ところが彼の留守中に、緑は妊娠していることに気がつく。

さりげなく本編に流れていくストーリー、たわいのないカメラワークが、どこか詩的にさえ見えてくる、平凡な日常の変化。その癒しというわけでもない、いかにも現代的な空気がとってもいい。主演の菊池亜希子と中島歩の存在感も映画にぴったり。

妊娠したのなら結婚だねという展開で、二人はそれぞれの両親に報告を兼ねて会うことに。真生の母は産婦人科の医師で、緑を診察するし、父は小学校のころ両親が離婚して以来の再会。

一方、緑の実家は、田舎の旧家で、姉は公務員、妹は花火職人、父は傾いた事業を細々営んでいる。

二つの家族に、今となってはどこにも特殊なものはない。きわめて、今の空気であり、現代の平凡がここにある。

よくある、親子喧嘩や、兄弟との確執などのありきたりな劇的な変化もないし、それぞれの家族と向き合い、やがて結婚式の場面がラストシーンとなって終わる。

緑が真生の実家で水路に落ちて、目の前にいた亀がくしゃみしたり、妊娠していて水路に落ちたところで、よくある流産的なありきたりもない。

なにげなくさらりと、そんな平凡だけれど、どこか最後にはほほえましいカップルのラブストーリーに見えてくるのだから不思議なのだ。そして、どこか好きになってしまう、そんな映画でした。


「やさしい女」(デジタルリマスター版)
ロベール・ブレッソン監督初カラー作品、ドミニク・サンダデビュー作である。


部屋で一人の婦人がベッドをかたずけている。部欄兄目を移すと、てーぶらが倒れる。ベランダの下で車の急ブレーキの音、一人の女性が倒れている。ショールがゆっくりと落ちてくる。こうして映画が始まる。さすがに、名作のオープニングらしい。

倒れていたのが、この家の妻、夫がその横たわった死体の横で、回想して物語が始まる。時折、前触れもなく、横たわる妻の横の場面に変わりながら、妻とのなれそめ、恋、そして、結婚からやがて、夫婦の間に溝ができていくまでが描かれていく。

胸から下だけを常に画面に映すという独特のカメラアングルで、どうしようもない何かを訴えてくる演出はなかなかのものである。

余りに幼くして妻となった女性に、おぼれながらも、何か一歩入り込めない夫のもどかしさ、さらに嫉妬。そして、ようやく溝が埋まったかに見えた瞬間、妻はベランダから身を翻す。倒れるテーブルと椅子、舞落ちるショールがラストでもう一度かぶって、棺の中に納められた妻を抱き寄せた後、棺が閉じられてエンディング。

独特の語り口はさすがにロベール・ブレッソンの手腕、そのオリジナリティを堪能する一本でした。


「種まく旅人 くにうみの郷」
第一作は田中麗奈目当てでいった。そのシリーズの第二段。普通のヒューマンドラマという感じの映画だった。

監督は篠原哲雄なのだが、どうも普通すぎてちょっと残念。まぁ、ローカル紹介映画だからこれでいいといえばこれでいい。

物語は政府官僚の神野惠子が、淡路島の調査にやってくるところから始まる。例によって、地元の人々と最初は確執があるが、そこは熱意で次第に受け入れられ、最後はハッピーエンド。いまさら、珍しくもないお話。

海の海苔、陸のタマネギという淡路島産業の根幹の問題点をテーマにしているというわけでもなく、仲のよくない兄弟がでてきたり、地元の伝統芸能の紹介もあり、完全な観光映画である。

しかし、この手のローカル紹介映画も大手シネコンにかけて上映することは大切ではないかと思う。

クライマックスは、ため池をさらって、たまった泥を海に流すことで、海の肥やしを作り、それがまわりまわって陸にミネラルを運ぶというよくわからない効果のために、海堀りという作業を再開して最後を飾る。

たわいのない映画だ。みなかったからといってどうということもなかったと思うが、まぁ映画ファンとしては押さえてもいい一本だったのかもしれない。