くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「予告犯」「トゥモローランド」「おかあさんの木」

kurawan2015-06-08

「予告犯」
監督は中村義洋ということもあり、期待したのだが、期待しすぎだった。しかし、それを白紙に戻してみてみれば、単純におもしろかった。

ストーリーの薄さは原作の弱さであり、そこをどうこういうのはよくないし、映画だけを楽しむには十分にできあがっていたと思う。ただ、主人公の予告犯が新聞紙をかぶっていきなり登場するオープニングで、一気に引きこもうとしているのだが、この導入部に迫力がないため、このあとの展開が淡々と見えてしまう。

しかも、予告される犯罪の描写も今一つ迫力に欠けるために、さらりと流れ、後半は犯人たちの、ここに至った三年前からの流れがお涙ちょうだい的に描かれる。

確かに、仰々しいオープニングから、実はたわいのない理由からの犯行だったとするラストの切なさを見せようとしたのだろうが、この緩急が中途半端になった感じですね。おもしろかったけど、まぁまぁの映画でした。


トゥモローランド
おもしろそうな題材だったので、楽しみに見に行ったが、思わせぶりが多すぎて、その思わせぶりを追いかけているうちに、話についていけなくなってしまった。監督はブラッド・バードである。

物語は1964年ニューヨーク万博に始まる。一人の少年フランクが、飛ぶことができる自分の発明品を持って会場にやってくるが、未完成なのを理由に断られる。そこに一人の少女がやってきて、バッジを渡し、私についてきてという。

アトラクションの乗り物に乗ってついていくと、突然バッジが光り、フランクは不思議な未来世界へ。そこにはあの少女がいた。

時は現代になり、冒頭でジョージ・クルーニー扮する男が、なにやらカウントダウンをしている。宇宙飛行士を夢をみる一人の少女ケイシーは、荷物の中にバッジを見つけ、それをさわると不思議な世界に着く。そこヘアテナという少女が現れ、フランクという男に会いに行けという。

フランクとは、オープニングで不思議な世界に飛び込んだ少年のおじさんになった姿で、そこで、地球がまもなく終わることを知らされ、それを助けるために、ケイシーは、フランクとアテナと力を合わせて、未来を変えようとする。

という内容らしいが、エピソードは伏線が多すぎるのが、どうもよくない。ストーリー展開のリズムを阻害するのだ。そのため、ポツポツとリズムが途切れ、流れていかないために、みている私はついていけなかった。

おもしろくないわけではないし、幼いフランクが自分を導いた少女に恋を抱き、その彼女がアテナというロボットだとわかり、切ないラブストーリーも平行して最後を締めくくる。でも、なぜあんなに中盤眠くなったのか、体調が悪かったか、映画が悪かったか、不明なままにみ終わってしまいました。


「おかあさんの木」
なかなかの日本映画の秀作でした。なんといっても絵作りが美しい。日本の風土、景色を丁寧にとらえたカメラが美しい。色彩にもこだわった演出も好感、久しぶりにきまじめな良質の映画に出会った気がしました。監督は磯村一路です。

映画は、開発のために伐採する木の交渉のために、役所の人間がやってくるところから始まる。その木の植わっている土地の所有者の老婦人に話を聞き、回想の形で物語が展開します。

七本の木を植えたのは、戦前、七人の男の子を産み、全員を戦地に送り出し、送り出すたびに木を植えて、その帰りを待っていたが、六人が戦死、最後の五郎が帰ってきたときには、自分の命が終わっていたというお話を元にしている。

教科書に載っていたというが、私は記憶がない。

雪の降る村の景色や、鈴木京香扮する母親の、心の変化も丁寧な演出で、物語を生み出し、戦地のショットも、適当にすまさずに、可能な限りの姿を画面に描写している。

細かい配慮と、総動員された時代背景の知識が、見事にスクリーンから伝わってくるなかなかの一本で、戦時中を扱った日本映画としては久しぶりの良品でした。

クライマックス、待ちに待った五郎が帰ってきたときに、七本の木のそばで息絶えている母親のショットはたまりません。いい映画でした。、