「ブワナ・トシの歌」
人間素朴すぎる心の声が、スクリーンから
あふれでてくるような、この不思議すぎる純粋な感動がすばらしい傑作。羽仁進監督の代表作の一本を見る。
映画は、主人公トシがアフリカにプレハブ住宅を造るために現地へ一人で出かけるところから始まる。
日本と異なった人々の生活、心境、環境、考え方。最初は戸惑い、いらだち、つい、手を出してしまったトシは、その反省の中で、滅びゆく動物たち、民族たちの姿を目の当たりに、自然の中で生きる生き物の素朴さを身を持って感じ始める。
そして、素直に、彼らに謝罪し、プレハブ住宅を完成させるが、完成して去る日、部落の人々は送別会を開いてくれる。一人一人がほほえみかけるカットを、クローズアップでとらえる映像が実にみずみずしいし、全体を覆うドキュメントタッチの映像が、本当に素朴なアフリカの姿を映し出す。
何気ないようなシンプルなお話ですが、現地の人々の表情が実に美しく素敵である。まるで、ナレーション的な存在として登場するトシの存在感もなかなか的確で、ついアフリカに行ってみたくなってしまう。いい映画でした。
「アフリカ物語」
動物撮影の専門家サイモン・トレバーが撮影監督として参加したと言うだけあって、完全は記録映画である。その映像のすばらしさは息をのむほどにすばらしく、圧巻と呼ぶのが値する。
一方で、ストーリーはかなり適当で、かつ雑である。だから、これを劇映画と呼べるのかとさえ思えてしまう。実際、羽仁進監督の最後の劇映画である。
アフリカの森の奥にすむ老人と少女、たまたまアフリカに不時着した青年、彼を追ってくるフィアンセ。どれも適当で中身は全くない。時折、いや頻繁に挿入されるアフリカの大地に群れる動物たちの姿、様々な表情、そのどれもが、息をのむほどに引き込まれる。
結局、自然記録映画である。その意味では見事な一本でした。