くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「愛を積むひと」「ストレイヤーズ・クロニクル」「アリスの

kurawan2015-06-29

「愛を積むひと」
それほど期待もしていないし、あまり好きな話でもないので、まぁいいかていどで見に行ったが、気がつくと涙があふれていました。たぶん、この映画は、結婚し、娘を持つ父親でないと、はまらないのではないかと思います。そういう意味で、はまりました。監督は朝原雄三です。

映画は旭川空港に飛行機が降りてくるところから始まる。東京で営んでいた工場を廃業し、妻の希望で、余生を北海道美瑛の町で暮らすことにした小林夫婦。夫の篤史は仕事一筋で生きてきた人で、妻良子のすすめで、家の周りに石塀をつくことになる。

その手伝いにきた青年徹の物語とからめて、
溝のできた娘聡子とのシーンをクライマックスに描いていく人間ドラマである。

徹と紗英の物語が若干、不必要に思えなくもないが、そこは、原作もあり、削除するに忍びないし、ストーリー展開のきっかけに必要だから仕方ないかと思える。

しかし、物語の根幹は父と娘であり、紗英の義父がつぶやく「血のつながった孫なら」というせりふに凝縮されるのだ。

良子が死んでからの後半部分が映画の中心なのだが、細かい荒さや、弱点は別に、作品の出来不出来は脇に置いても、素直に、心にどんどん突き刺さってしまった。当然眠くもならない。

ラスト、ネックレスを見つけた聡子が、父からの手紙を読むシーンは、個人的には圧巻。脇に入った柄本明も、芸達者に納めるし、いい映画だったのではないかと思いました。


「ストレイヤーズ・クロニクル」
もっとおもしろくなるはずなのだが、演出に切れがないのか、脚本にスピード感がないのか、特に後半、くどくなって退屈になってしまった。監督は瀬々敬久である。

遺伝子操作による実験と、過度のストレスを与えた親により生まれた二種類の特殊能力を持った少年たちの物語。その背後にあるはずの政府の巨大組織は、ただ、興味本位で彼らを作っただけだというし、学が死ぬことで拡散する死のウイルスに、人類の未来をかけてみるというストーリー展開の脆弱。これが原作なら、あまりにも稚拙な発想である。

瞬間移動や、行動予知ができる能力のキャラクターたちのバトル戦はおもしろいが、それ以外は、きわめて地味で、中にはわかりづらさのあるものや、ストーリーに彩りを与えないものまで描き切れていないのが残念。もっと、それぞれのキャラクターの活躍場面があってもおもしろかっただろうにと思う。

とはいえ、黒島結菜のかわいらしさが改めて光る作品で、彼女の魅力に取り込まれてしまうし、最近大人っぽくなった成海璃子の存在感も良かった。途中でふざけたポップなテーマソングに載せて見せる映像はおもしろかった。

まぁ、後一歩あれば、楽しい娯楽映画になったと思うと残念な一本だった。


アリスのままで
これはいい映画でした。というより、アカデミー賞主演女優賞受賞のジュリアン・ムーアの演技に感嘆してしまいました。特にクライマックス、原稿をマーカーでたどりながらのスピーチシーンは圧巻で、いつの間にか胸が熱くなってしまいました。監督はリチャード・グラツアーという人です。

映画は、主人公アリスが颯爽とスピーチする場面に始まります。しかし、ふとした物忘れ、さらに診察室での質問、自らもその方面の知識があるために、自分の異常に気がつく。そして下される若年性アルツハイマーの診断。ここまでが実に小気味よく展開し、一気に物語はアリスが、次第に壊れていく様を描いていく。

もしも、以下の質問に答えられなくなったら、とPCに自殺を示唆するようなメッセージを入れる下りも、なかなか。そして、症状が進み、ふとしたことでそのファイルを開き、あわや、自殺でエンディングかと思いきや、間一髪で実行されず、次第に進む症状の中で、末娘のリディアに寄り添われて海岸を歩く姿でエンディング。

振り返ってみると、ちょっとアリス以外の子供たちの描写が弱いが、それはジュリアン・ムーアの際だった演技にかすんでしまったのだろう。それほど、久しぶりにすばらしい演技をみた感じでした。

全般に、淡々とした映像ですが、なかなか見応えのある、しかも嫌みもない、いい映画でした。