くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「共犯」「犬どろぼう完全計画」

kurawan2015-07-30

「共犯」
不思議なくらいに整理足りない映画でした。おもしろい?ような伏線と二転三転が見えるような気がするのですが、ちゃんと組み立て切れていないのか、書いているうちに、思いついた展開に翻弄されていったのか、どうも不思議な感覚で楽しんだ映画でした。監督はチャン・ロンジー

映画は一人の少年が水の中に沈んでいくシーンから始まります。どうやら、水死したらしいカットの後、一人の少女が路地で倒れていて、彼女を発見する少年、続いて少年二人。死んでいたのはシャーという同じ学校の少女。発見したホアン、リン、イエはなぜ彼女が死んだのかの真相を確かめようとする。

うん、ここまではいい。そして、シャーがいじめられていたらしいということになり、自殺の原因となるメモをホアンが見つけて、そこからシャーを自殺に追い込んだらしい少女を懲らしめてやろうという計画を立てる。

うん、これはこれでいい。そして、懲らしめたのはいいが、その後三人は喜んで、沼ではしゃいでいるうちに、誤ってホアンがおぼれて死んでしまう。イエはホアンを殺したんじゃないかという学校で噂が流れ、リンは自分にもその容疑がかかるのではと不安になる。

さらにホアンの妹が関わってきて、兄であるホアンが借りていた本の貸し出し名にシャーの名前がでてきて、すべてはホアンの計画だったのではと、リンとイエは気がつくのだが。

うん。このあたりからがどうも混乱してしまうのです。つまり三人が沼ではしゃいで、不測の事故が起こってから、無理のある展開になってくる。

ホアンがいじめられていて、その犯人を突き止めてやろうとする妹のせりふや、シャーが母親から疎まれて、孤独を感じているというエピソードが絡んで、全体がまとまらなくなってくるのです。

結局、シャーは母からのプレゼントのネックレスをベランダから落とそうとして、誤って落ちたか、自殺したかのシーンがクライマックスになり、母親がシャーの遺品の中にあるネックレスを見て涙を流したり、取り留めもない伏線が結果を見せないままにラストシーンへ続くのです。

もう一度、ちゃんと整理して、一本の決まったストーリーを頭に置いた上で再構成し直したら、かなりおもしろいものになると思う。まるで、第一稿の脚本が完成し、その推敲も練り直しもせずに、撮影した感じの映画だった。


「犬どろぼう完全計画」
友達のおもしろいという評判にのせられて見に行った。確かに楽しいし、すべての伏線が明らかになるラストシーンは爽快。韓国映画にしては、よくできた感動作でした。

原作がベストセラー小説ということなので、ストーリーのおもしろさ、よくできている構成は原作によるものだろうと思う。そう考えると、もっとしっかりとした監督やスタッフがそろったらかなりの傑作になりうる映画だったかもしれない。

主人公の少女ジソは、父がでていって、弟と母の三人で車で暮らしている、いわばホームレスである。冒頭のコミカルな導入部をもっとテンポよくすれば、この後の展開がずっと違ったろうに、ここは脚本の弱さである。

クラスメートができて、坪500万ウォンの家のために、金持ちの家の犬を盗む計画を立てるのが本編だが、この中心部分の組立が実に弱く、まわりの伏線に力をいれすぎたために、ぼやけてしまっている。

つまり、その場限りで脚本をつづりながら撮影した、韓国映画の撮影方法の雰囲気を感じたのが実に残念。

この後、ピザ宅配の兄ちゃんを使ったり、浮浪者に助けられたり、レストランの富豪の老婦人が絡んでくるという本編と伏線の区別がてんでバラバラで、老婦人の財産をねらう甥っ子のキャラクターも生きていない。

最後に、張り巡らされた伏線を自分なりに理解して、のめり込んで感動するという自己満足な出来映えになっているのがとにかく残念。

とはいえ、最後のエンドクレジットにまで、家を手に入れる下りに、それまでの伏線を残していたというのは心憎い演出だが、後一歩、まだまだ韓国映画の稚拙さが残る映画でした。勧めてくれた友達面々に申し訳ないが、期待しすぎたかもしれません。