くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ナイトクローラー」「さよなら、人類」

kurawan2015-08-26

ナイトクローラー
個人的な感想ですが、後味の悪い映画だった。確かに、こういうエンディングはありだと思うし、こういう主人公の描き方はあってしかるべきである。しかし、ホラー映画やミステリーのラストならともかく、何かが違う。どこから陰湿な空気が漂うラストは、ちょっと辛い。

映画は夜の町を美しい独特のカメラアングルと感性で捉える。この映画の最大の特徴が、この美しいカットの連続、夜の町の美しくもどこから冷たい感じのする映像である。監督はダン・ギルロイという人である。

タイトルが終わると1人の男が鉄条網を切り取ろうとしている。どうやら、鉄くずを盗んで売っているらしい。いかにも小悪党落として登場するこの主人公ルーは、終始、このいかにもいけ好かない小悪党の片鱗を絶対に崩さない。

彼はたまたま事故現場の横を通り、その撮影映像をマスコミに売るという商売に手を出すようになる。

才覚があったのか、持ち前の小悪党の狡さが、いやらしいほどの貪欲さで、映像を撮り、テレビ局に強引に売り込み、さらにハイレベルな映像を求めるようになる。

ある日、強盗殺人事件に遭遇、警察が駆けつける前に現場で撮影し、当然大反響となるが、彼は犯人の姿と車のナンバーを撮った映像を隠蔽し、さらに、ネタのために利用、とうとう犯人の逮捕の現場も商売のネタにし、警官も死傷、その場で、自分を脅してきた相棒も見殺しにしてしまう。

そして、さらに商売は飛躍し、車も二台になり、相棒も増えて、颯爽と夜の町に飛び出してエンディング。

しかし、どこか爽快感も、主人公への賛辞も当然わきあがらない。こんな人間がどんどん都会に増えているのだろうかという殺伐とした思いだけが後に残るのだ。

冷たいほどの画面作りの感性、それがこの監督の現代に向けている目なのだろう。だからこんな作品が作れるのだと思う。

ストーリー展開のスピード感、ハイスピードのリズム、疾走する車の使い方や、主人公がハイエナのように現場を暗躍する演出のうまさはなかなかの佳作であるが、個人的に好きな映画ではない。


「さよなら、人類」
なんともシュールな映画でした。宣伝を見たときは、乾いた笑いが連続のウィットの効いた作品だと思っていたのですが、それは確かにそういう空気なのですが、後半に進むにつれて、どこか、不思議なムードが漂い始めるのです。

監督はロイ・アンダーソンという人です。

映画は死に直面した人という題名から始まり、ワインの栓を抜こうとして死んだ人、あの世までお金と宝石を持って行こうと固執する老婆、客船の食堂で突然死し、注文した食事が宙に浮くというエピソードなどを経て、一応この作品の中心人物の1人が床屋で座っているシーンに流れる。

サムとヨナタンは面白グッズを売り歩くコンビで、行く先々で、というかカットが変わるたびに様々な人間の欲望、悲しみ、希望、ユーモア、恐怖などが描かれる。

全編39のエピソード全てがワンシーンワンカットで、計算された色彩と人物配置、セット、構図が徹底され、その非現実な映像が描くどこか皮肉ったようなシュールな世界が次々とスクリーンに登場する。

時に、ブラックユーモアであり、時にリアルな恐怖であり、時に俗っぽい風刺でありと、様々な世界を監督の感性で描いていく様は秀逸であるが、ちょっと芸術色が強すぎて、終盤はさすがにしんどくなる。まぁ、この手の映画の面白さこそ、映画を極めた面白さなのですが、一見の価値は十分な映像世界を堪能した気分です。