くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アントマン」「浮草日記」

kurawan2015-09-25

アントマン
近年のマーベルコミックの映画版に中で、ずば抜けて映画としての面白さを堪能できる一本でした。とにかく、小さくなったり大きくなったりを繰り返しながらのアクションシーンが、独特のスピード感でおもしろいし、脚本に加わったエドガー・ライトの遊び心満載の描写の面白さが光ります。監督はペイトン・リード。

ハンク・ピムという天才科学者が、自ら設立した会社を追い出されるところから映画が始まります。彼は、独自の研究で、様々なものを縮小するエネルギーを開発したのだが、その完成した成果を表立ってしまうの危険と考え隠蔽したのです。

後継に、弟子としてのクロス博士が着任して現代。主人公であるスコットが、盗みの刑期を終えて出所してきた。しかし、前科者に仕事はなく、困っているところへかつての仲間から、空き巣に入る仕事が舞い込む。どうしようもなくなったスコットは再度の犯罪に加わるが、天才的なテクニックで、その目的の家の金庫の進入する。しかし、そこにあったのは1着の妙なスーツ。なぜ金庫にあるのか不思議に思った彼はそのスーツを持ち帰るが、全てはピム博士の計画だった。

一瞬で1センチあまりに小さくなることができる驚異の発明品であるそのスーツを使い、クロス博士が利潤追求のために完成した技術を、軍事目的で売ろうとする計画を阻止しようとするのが本編。

スコットの仲間の三人のとぼけた泥棒たちのキャラクターや、クロス博士が着て、アントマンとなったスコットと戦う場面で、機関車トーマスが巨大になったり、蟻が大きくなったところにボソッと入るぼけたセリフなど、エドガー・ライトらしいお遊びが散りばめられて、単調なアクション映画に終わらせない独特の味があるのがとっても楽しい。

もちろん、ラストは、敵を倒し、ラボも爆破して、スコットの娘にも認められてハッピーエンドだが、ある意味独創的なマーベルコミック映画になった気がします。楽しかった。


「浮草日記」
山本薩夫監督の嫌な部分が全面に出たという感じの作品で、解説には喜劇と書いてあるが、いかにも臭いセリフとくどい展開が、辟易としてしまう映画でした。とはいっても、構図はしっかりとしているし、監督の力量は認められるのですから、大したものです
映画は、橋の向こうを旅芸人の宣伝口上が通っていくのを皮のこちらからフィックスで捉える構図から始まります。このカットはさすがに、見事なものです。

興行師にいいように扱われ、金も払われずに、次の芝居の準備をするこの一座の物語と幕を開けますが、無理難題を言われるままに炭鉱町で興行を打つことになり、たまたまそこで起こったストライキと関わり、労働者たちと意気投合して、一緒になってお芝居をするというクライマックスを迎える人間ドラマです。

一見、感動的な展開ですが、特に終盤は、やたらと労働組合の旗が目立つし、歌も目立つし、悪徳興行師の存在も、いつの間にか消えてしまいます。

最後は、行進する労働者たちを捉え、明るく手を振って旅芸人の一座がその村を去って行ってエンディング。

コテコテの労働運動映画で締めくくるあたりが、かなりなものです。もう終盤は、見ているのが嫌になるほど、強烈なムードになってきますが、これが本来の山本薩夫なのでしょうね。