くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「合葬」「GONINサーガ」「雲ながるる果てに」

kurawan2015-09-28

「合葬」
つかみどころのない映画だった 脚本が渡辺あやなので見に行ったが、何のことはない、監督の小林達夫の力量不足と、キャストが弱いために、映画が映画として動かないし、深みが出てこない。

一人の若侍吉森が自宅に帰ってくる。草履の裏に違和感があり、それは何かを踏んだようだというつぶやきから、それが屍から流れる血糊のごときものというシュールな映像から始まるこの作品。このオープニングは面白いので、これはと思って見て行くのだが、中心になる侍たち三人のキャラクターが際立たない上に、同一に見えて、物語につかみどころがない。

時折、シュールな映像で、シンメトリーな画面や、不可思議な俯瞰、斜めの構図や、意味ありげなつぶやきから、幻想的な映像が繰り返されるが、それが表面的にしか見えないのだ。

物語は江戸末期、彰義隊と呼ばれる江戸幕府解体反対派の若者たちの集まりに参加した三人の侍の運命を描く。

当然、上層部に良いように使われながら、師と崇め、尊敬する直属の上司森も殺され、悲劇の結末に進んでいく。という、いかにもな青春群像劇のごときだが、とにかく、映像がテンポに乗ってこないので、しんどいのである。

ラストは、あるべき悲しいラストシーンとして締めくくるが、それが伝わるものがない。監督と俳優の格の違いが、いくら名作コミック、名脚本家の本でもここまでしかできないのかという映画でした。


「GONINサーガ」
正直言って面白い。石井隆ワールド全開の劇画の世界である。1995年の「GONIN」を見ていないのですが、冒頭の30分くらい、ひたすら過去の映像が繰り返されるので、何となく、その前提がわかる。

ただ、とはいっても、今回の作品、演じる役者に若干弱さがあるために、旧作ほどの迫力は出ていなかったような気がしないわけではない。もちろん、竹中直人らの登場で、一気に映画は、映画になってくるというか、しまってくるし、クライマックスのスプリンクラーからの水浸しの中でのバイオレンスシーンのカット編集の面白さ、カメラワークの緊張感はさすがに見事なもので、まるで劇画の書き割りを眼の前で見ているような迫力がある。

ストーリーは、要するに1995年の事件で、死んだヤクザの幹部や殉職した警官、関係者の息子たちが、真実の犯人を求め、復讐するという話である。そこに、かなりの無理がないとは言えないものの、ノスタルジックな音楽を挿入し、懐かしい映像演出を見せながら、ひたすらの銃撃戦とバイオレンスが繰り返される展開は、本当に迫力がある。酸素ボンベを引きずりながら、まるでダースベイダーのごとく現れる殺し屋竹中直人のキャラクター、もう、劇画の世界にとっぷり浸るのだ。

クライマックス、かつてバブル全盛期のホール、今は寂れ、新たにアミューズメントビルになろうとしている場所で、スクリーン裏手から飛び込む主人公たち、迎え撃つヤクザたち、スプリンクラーのシャワー、銃撃戦、次々と倒れる人達、そして全ての人物が死んで、エンディング。短いカットと切り返しの連続、そこに生温い感情の入り込めない映像の連続に、一気にラストシーンまで。これが石井隆である。その意味で堪能できる。面白かった。


雲ながるる果てに
監督は家城巳代治、普通の感動ものという感じの戦争映画です。とにかく、演技もストーリー展開も、かなりクサイです。見ていて気恥ずかしくなるのですが、公開当時の映画界は、これはこれで普通に受け入れられたのだと思います。まだまだ、戦争を知る人が身近に見ていたのですから。

クサイなどという感想を書くことはかなり失礼なことだと思います。その意味では、かなり時代色のある映画と言えるかもしれません。

物語は、九州の特攻隊の部隊。今日か明日かの出撃命令を待つ兵士たちの人間模様を感動的に描いた作品です。しかし、軍の上層部の描き方はあきらかに、特攻隊の兵士を使い捨てのごとく発言するくだりなど、スタッフ側の思考が叙述に、いや露骨に描写されていて、ちょっと辟易としなくもないです。

こういう特集で上映される一本としてみれば、納得の作品でした。