くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「コードネームU.N.C.L.E.」「冬の光」「ラスト・ナイツ」

kurawan2015-11-16

「コードネームU.N.C.L.E.」
0011ナポレオン・ソロ」の映画版である。アメリカのエリートスパイ、ナポレオン・ソロソ連のエリートスパイ、イアン・クリヤキンが手を組み、ナチスの残党が計画した核ミサイル製作を阻止するというもので、コミカルで軽快な展開で、昔懐かしいスパイ映画が展開する。監督はガイ・リッチーである。

物語は、ソロがイアンに追跡されるスピーディなシーンからスタート。巧みな判断力で、かわしていくソロに、並外れた肉体能力で迫るイアン。ガイ・リッチー得意のハイテンポな導入部である。

二人の決着はつかないまま、上層部の命令で、ナチスが企てた計画を阻止する任務に着く。ときは第二次大戦終結後の米ソの冷戦時代という、懐かしい舞台で、それだけでもノスタルジー満載。さらに、コミカルな中に二人の卓越した技量が所狭しと活躍するというのも、どこか懐かしい展開。

ガイ・リッチー得意のスプリット映像をクライマックスに、計画を阻止し、二人は別れるかと思いきや、一緒に戦った英国スパイの女性も加わって、コードネームU.N.C.L.Eとしてスタート。シリーズ物の予感である。

ただ、今回の作品、オリジナル版のキャラクターは通り一遍にしか描かれていないし、敵方も今ひとつ、個性が強くない。さらにストーリー展開も平凡で、迫力に欠ける。その為、本当に平凡な出来栄えに見えてしまう。

ノスタルジックな時代設定と、懐かしいストーリー構成なのに、どこか、気取りすぎた感が否めないのが物足りない一本でした?


「冬の光」
7、8年前に見直した作品ですが、やはり、ベルイマンは数年に一度、見たくなってしまう。しかも、毎回、唸ってしまうシーンがあるのだから、これが芸術というものなのでしょう。

徹底的に神の不在に焦点を集めた物語作りと、スヴェン・ニクヴェストの目の覚めるような美しいモノクローム。そのコラボレーションに、陶酔感を味わってしまいます。

教会でミサを上げる司祭のアップから映画が始まり、彼の周囲で起こる様々な出来事や、彼の過去の経験、彼に救いを求めてくる人々の訴えなどに、果たして本当に神はいるのだろうかと自問自答を繰り返す主人公トーマス。

まるでユトリロの絵画の一瞬を見たようなハッとする景色が挿入されたかと思えば、カメラが主人公に寄り、そして離れる意味ありげなカメラ演出。

映画は、冒頭と同じく、いつも通りミサを始める主人公のアップで終わる。なんとも言えないメッセージが胸に迫ってくる。それはテクニックではなく、イングマール・ベルイマンの、並外れた感性が生み出す表現力だろう。まさに映像の極致である。


「ラスト・ナイツ」
紀里谷和明監督作品は嫌いである。実際、彼は映画を作る才能だけが欠如しているのではないかと思う。で、期待せずに行ったが、その通りつまらない映画だった。

物語は「忠臣蔵」で、舞台を西洋に移しただけのストーリーである。ただ、オリジナルから勧善懲悪の部分、日本の精神美学、武士道の潔さなどをすべて排除して、平凡なコスチュームアクションに仕上げている。

いつも思うが、紀里谷和明は本当にストーリーテリングが下手くそである。今回もやたら出てくるもったいぶったスローモーションで映像が間延びするし、主人公たちの人間ドラマが描けていないので、クライマックスでの悲劇も伝わらない。

オリジナルの話から、精神論を排除し、娯楽に徹するのなら、もっとおもしろく作るべきだが、やたら壮大なセットなのか舞台を用意し、いかにも大作と訴えているものの、本当に貧相な作品である。
よほど金があるのか、自らプロデュースもし、ハリウッド進出などと言っているが、何か映画で功績を上げたのか?
まぁ、凡作である。