くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「わたしの名前は…」

kurawan2015-11-17

ファッションデザイナーのアニエスベーが、本名アニエス・トゥルブレで初めて映画監督に臨んだ一本だが、なるほど、感性の鋭さ、はなるほどと思わせるが、とにかく話が重い。一流のファッションデザイナーが、映画を作るにあたり、こういう話を選ぶのかと言いたくなる。

映画は、赤いトラックが走る後ろ姿でタイトル。そして、主人公の少女セリーヌの家庭に変わる。父親が、長女セリーヌを二階に誘い、性的暴行を加えているらしいシーンで暗転。いきなりの導入部に、息を飲む。

しかし、セリーヌは母にも祖母にも言わず、やがて自然学校で、10日間の外出へ旅立つ。そして、そこで、トラック運転手ピーターの車に潜り込んだところ、いつの間にか車が走り出し、二人は逃避行をすることになる。

時々、コマ飛ばしをしたり、荒いスタンダード映像や、モノクロ、イラストをかぶらせたりと、映像を弄ぶように画面が進むが、ラストで分かるが、これは皆、大人になったセリーヌの思い出の回想場面なのだ。

英語しか話せないピーターとフランス語だけのセリーヌ。意思が通じるようで通じない二人だが、妻と娘を亡くし、人生に絶望しているピーターにはセリーヌが愛しく、父と違って優しいピーターをセリーヌは慕う。

セリーヌが暴行を受けていたことを知るピーターと、娘を亡くしているのを知るセリーヌ。言葉が通じないが、お互いがお互いを理解し、至福の三日間を過ごす。

やがて、警察に捕まるピーターだが、セリーヌが処女ではなく、自分が暴行犯にされても、ピーターは口を利かない。自分が黙っていれば、セリーヌを守れると信じ、検事の前で自殺する。一方、セリーヌも「私の名前は…」としか答えない。父が引き取りに来るが、二度と手を出さないと告げる。

そして、成人になったセリーヌは子供を抱きながら、少女時代の三日間は最高の時間だったとつぶやく後ろ姿でエンディング。おそらく、ピーターも最後に最高のひと時を過ごしたのだろう。

話は、とにかく悲惨なほどに重いので、手放しで、良かったと感想を書けないが、作品としては、それなりの感性で作られた佳作ではないかと思います。