くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション」「恋人たち」

kurawan2015-11-20

ハンガー・ゲーム FINAL;レボリューション」
全く、だらだらと間延びするストーリー展開の映画だ。第1作からその空気があったが、今回の大団円に至っては、ただ、大作のプライドで映画を長くしただけの仕上がりになっている。話の結末は最初から見えていて、ただその結末に向かって、ダラダラ物語が流れる感じだった。

第3作目のファイナルになって、前後編に分けた後半。主人公カットニスたち反乱軍が、政府軍の首相スノーを倒すべく、敵陣地へ乗り込む下りをクライマックスに、政府軍と反乱軍の戦いを描く。

しかし、もはや政府軍に精彩はなく、と言って反乱軍にも迫力はない。結果、どうでもいいように派手なバトルシーンが続くのだ。しかも、そのバトルシーンもしょぼい。

きわめつけは、首相の官邸前までたどり着いたカットニスたちの目の前で、何もかもが爆撃され、実は反乱軍が、スノー首相の仕業に見せかけて女子供を殺戮、結局反乱軍のリーダーがスノー首相の後釜に座るというラスト。いや、そのあと、カットニスが弓矢で殺して、とりあえず決着をつけるのだから、もうやってられない。

一体、どういう物語構成か、適当にもほどがある一本だった。さすがに、ジェニファー・ローレンスファンとはいえ、それで納得するわけにもいかないしょぼい映画でした。


「恋人たち」
作劇のうまさに唸ってしまう秀作。確かに好まない人もいるかもしれないが、相当な出来栄えの一本である。監督は橋口亮輔である。

通り魔殺人で妻を失ったアツシ。橋梁点検をしながら、妻を失ったことから逃れられず、弁護士と裁判のために奔走する。ここに、姑とそりが合わない上に、自分に無関心な夫と暮らす瞳子。ゲイで、親友への想いを隠しながらも、仕事を続ける弁護士の四ノ宮。三人の、どこか不器用な人々をオムニバス風に絡ませながら、とにかく前半は、後ろ向きな生き方に湿っぽく陰湿に展開する。

しかし、アツシは、健康保険の金も払えず、給料を前借りし、通り魔に執拗にこだわり、弁護士になけなしの金を払う。四ノ宮は、友人から、子供に手を出したのではないかという疑いを持たれ、避けられ、孤独に陥る一方、学生時代からの想いを、切られた電話につぶやく。瞳子は、鶏を素手で殺す、出入りの業者の男に、どこか惹かれ、その男の入り浸るスナックのママに妙な水を勧められながらも、女に目覚め始める。

三人の生活は、一見よくあるようであるが、どうにも前に進むことなく、不器用で、それがとにかく歯がゆく、後ろ向きに見えてしまう。

しかし、終盤、アツシは、同僚で片腕のない男の体験談を聞いて、どこか不器用なのは自分だけじゃないと知って、気持ちが救われる。瞳子は男のアパートにやってくるがその男がヤク中のようで、スナックのママも、店を閉めるという話の中で、彼女たちも、適当な人生を暮らしているのを見て、自分の平凡さに幸せを感じ、そんな折、夫も、子供が欲しい風な言葉をかける。

ラスト、アツシは、今まで下ばかり見ていたのを青空を見上げ、瞳子も、自転車で颯爽と走り、普段の毎日に戻っていく。四ノ宮も、顧客の離婚話も決着し、ゲイの恋人への思いも吹っ切れて、前向きに生きることを知る。

沈んでいた展開を一気に外に向ける作劇と演出のうまさが光るラストシーンで、好みの映画ではないものの、いい映画だった気がします。