くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「淑女超特急」「陽気な中尉さん」「百萬弗貰ったら」

kurawan2015-12-17

「淑女超特急」
自らの作品のリメイクであるが、全体のテンポといい、ところどころに散りばめられるアクセント的なセリフの挿入といい、まさに計算された笑の世界が展開。これもまたエルンスト・ルビッチの世界である。

ストレスがかかるとしゃっくりが出るジルは、夫婦生活に問題ありということで、夫との離婚を考え、一方でピアニストのセバスチャンに心惹かれと、ラブコメディの典型ともいうべき、離婚と、夫婦仲の倦怠化、そして、夫婦それぞれの本当の心の惹かれ合いを描いていく。

たわいない物語だが、しゃっくりや、夫が妻に対し、時々つつくツンという仕草、セバスチャンのフンという癖など、どれもが絶妙のリズム感を生み出してストーリーを展開。

結局、夫は妻を愛していて、自分の元に戻ってきた感じのジルの姿に小躍りするクライマックスから、ハッピーエンドへ。これこそラブコメの王道という一本で楽しかった。


「陽気な中尉さん」
これまたエルンスト・ルビッチの代表作の一本。いや、これは恐ろしいほどの傑作でした。なんといっても1931年の製作年とは思えないほどの斬新なストーリー展開と、散りばめられるエルンスト・ルビッチの天才的な感性に彩られ、現代でもここまで見事な映画は作れないだろうと言える一本でした。

映画は、一人のプレイボーイの中尉ニキがバイオリン弾きの女性フランツと恋に落ちるところから始まる。巧みに、口説き落として、付き合いが始まり、熱々の状況の中で、オーストリアといとこ関係の王室の王女アナとその父がやって来る。その警備の時に、フランツに投げたウィンクと微笑みが、たまたま通りかかったアナのハートを射止めてしまい、その言い訳の中で、いつの間にかアナはニキに恋をしてしまう。

しかも、あれよあれよという流れで、ニキとアナは結婚。しかし、ニキは一方でフランツと会うのだが、アナの気持ちを察したフランツは、アナに、ニキに気に入られるようにアドバイスをし去っていく。

見違えるほど洗練されたアナに、ようやくニキは心を向け、二人はハッピーエンドになるという展開である。

普通のラブストーリーなら、ニキはフランツの元に戻るところだが、フランツが粋にもアナに恋の手ほどきをして去っていくというストーリーの組み立ては見事なものである。

時折挿入されるバイオリンやピアノ曲、そして、ニキたちの歌など、映画の本質をしっかり身につけた上の見事な感性で描かれる物語は、今見ても遜色なく、いや、いまの監督に果たしてここまで感性のある人がいるだろうかとさえ思ってしまう。

エルンスト・ルビッチの才能はこれほどかと唸ってしまう傑作でした。素晴らしい。


「百萬弗貰ったら」
ある大富豪の社長が、臨終を前にして、自分の財産をねらう人たちに反旗を翻し、電話帳で無作為に選んだ人々に100万ドルを与えるということを思いつく。

お話はオムニバス形式で、100万ドルをもらったそれぞれの人々の喜怒哀楽のドラマを描いていく。

エルンスト・ルビッチ作品は、しがないサラリーマンが小切手を受け取り、社長室にいって、社長にベーをするだけの物語でした。他にも、死刑囚の話、娼婦の話、老夫婦の話、老人施設の話、陶器の会社でヘマばかりする男の話など多彩な物語が次々と展開。ラストで、元気になった社長が、金をやった人々に誘われて、意気揚々と出かけて行ってエンディングとなる。

ちょっと面白い題材の作品で、こういうのも有りかという一本でした。