くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ディーン、君がいた瞬間(とき)」

kurawan2015-12-21

一編の詩篇のような色合いのある静かで美しい映画でした。
ジェームズ・ディーンの死の直前、写真家デニス・ストックとの旅と友情を描いた作品で、劇的な展開も、芸術的な画面も存在にしないが、どこか、しんみりと見入ってしまう。監督はアントン・コービン

暗室の赤いランプの場面から映画が始まる。写真を現像しているデニス・ストックは、世界を驚かせるような写真を撮ろうと考えていた。そんな彼の前に、不思議な魅力のある一人の俳優ジェームズ・ディーンが現れる。彼のスターとしての才能を見抜いたデニスは、早速、彼の写真を撮るべくその費用のためにLIFE誌と交渉、撮影を始める。

すでに「エデンの東」の主演なども務め、スターダムにのし上がっているにもかかわらず、街中を普通に歩いても、目立たない感じのジェームズ・ディーンの姿は、当時の映画産業がいかに多彩な大スターを排し、輝いていたかが目の当たりに見える。巨匠エリア・カザンの作品の主役をしているにもかかわらず、恋人ピア・アンジェリがレッドカーペットを歩いているのに、彼は見向きもされない。これがジェームズ・ディーンが生きた時代なのだ。それを見るだけでも、値打ちがある映画である。

いっぽうのデニスは、妻と離婚し、6歳の子供がいるが、写真家としての野心に燃え、家庭に止まれない。もちろん、息子や妻との日々を大切にしないとと悩むものの、言い訳をしては仕事をしている。

華やかな世界に身を投じたにもかかわらず、故郷を懐かしみ、ホームシックに押しつぶされそうになりながらも、役者として慢心しようとするジェームズ・ディーンの姿。

二人はどこか似ているようで、生きる目的にどこか違いを垣間見せる。その微妙な違いが静かにスクリーンから伝わってくる感じが、なかなかの魅力のなのです。

ジェームズ・ディーンの写真が評価され、次のステップに進めそうになったデニス。一方、「理由なき反抗」の主役も決まり、順風満帆に見えるジェームズ・ディーン。しかし、故郷に戻った時のあの暖かい空気が心のどこかに残り、「エデンの東」のプレミアの日にデニスを誘ってどこかに行こうとするジェームズに、デニスは、仕事があるからと断る。ふっと寂しそうな顔を見せるジェームズがたまらない。

そして、飛行機の中、ジェームズはホームシックになっているという自分を詩を呟く言葉で映し出し映画は終わりへ。

最初は、ジェームズ・ディーンを演じたデイン・デハインがなかなかジェームズ・ディーンに見えなくて困ったが、それを脇へおけば、この映画は、ちょっとしたいい映画だった気がします。見てよかった。