くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「神様なんかくそくらえ」「アンジェリカの微笑み」

kurawan2015-12-27

「神様なんかくそくらえ」
ニューヨークのストリートガールの刹那的な恋を描いて、東京国際映画祭でグランプリと監督賞を受賞した作品なのですが、要するに、昔風の言い方をすれば、乞食の物語である。監督はジュシュア・サフディとベニー・サフディである。

ほとんど、ドキュメント風の映像で、夜のニューヨークの気だるいような世界を切り取っていく。一方で、華やかなニューヨークがあるというこういう、底辺に近い世界を描いた意味で、一見の価値ある一本。

主人公ハーリーは恋人イリヤと、後がないような日々を送っている。ドラッグに溺れ、盗みを繰り返し、路上で物乞いをする。荒れたような映像は、彼らの荒んだ毎日をそにまま映し出すようであり、未来も見えない彼らの姿は、まるで、人類が週末に向かっているようにも見える。

喧嘩をし、疎遠になりかけるも、イリヤを愛してやまないハーリーの姿は、切ないほどに純粋に見えるのは、その他の景色があまりにみ虚しく見えるからかもしれない。

やがて、二人は高速バスでフロリダに向かうことにする。バスに乗り込んだものの、イリヤはハーリーが眠った隙にバスを降りる。そして、ニューヨークに戻り、ろうそくの炎を明かりに眠っていたところ、ろうそくが倒れ、火が彼の体にまわって焼死してしまう。

目が覚めたハーリーはイリヤがいないことに気がつき、バスを降り、ニューヨークに戻ってきて、またいつもの生活に戻ってエンディング。

出口がない。音楽の使い方といい、映像の気だるさといい、独創的な画面作りだと思うが、こういう路上生活する若者というのが、個人的に受け入れられないので、終盤まで入り込めなかった。作品の質の良し悪し以前の問題の一本でした。


「アンジェリカの微笑み」
マノエル・ド・オリヴェイラ監督が101歳の時、つまり5年前に監督した作品である。一人の写真家イザクガ、亡くなったばかりのアンジェリカという女性の写真を頼まれ、撮影に行くと、ファインダーの中で彼女が微笑んでいた。

一歩間違うとホラーになるファンタジックな作品で、マノエル・ド・オリヴェイラ監督らしい一本と呼べなくもない。ただ、出来栄えとしては、ちょっとテンポが悪いように思えるし、ラストの処理も、少し、バランス的に良くない。しかしながら、画面の構図、展開の処理など、さすがに巨匠の貫禄が見える一本でした。

夜、一台の車がある写真館にやってくる。アンジェリカという女性が亡くなったので、写真を依頼したいというのですが、主人が留守。困っていると、通りかかりの男が写真家を知っているという。そして紹介されたのが主人公のイザク。

イザクはカメラを持って、アンジェリカの家に行き、写真を撮りはじめるが、なんと、ファインダーの中に死んだはずのアンジェリカが微笑んでいる。

この日から、すっかり彼女に取り憑かれたようになり、夢にうなされ、時折彼女が見えるようになるのだ。やがて、お互いの愛はどんどん接近し、イザクの住むアパートの小鳥が死んだことがきっかけで、イザクはアンジェリカとともにあの世へ旅立つ。

ファンタジックホラーの装いといえばそういう感じで、香港映画にあったような展開でもある。オリヴェイラらしい映画であり、一味違うファンタジックなラブストーリーと思えるのですが、何か物足りなさを禁じえない映画でした。