くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「COMET/コメット」「タイガー・マウンテン 雪原の死闘」

kurawan2016-01-06

「COMET/コメット」
おもしろい物語だし、独特の感性で作られる映像は、ある意味かなりオリジナリティのある映画なのだが、いかんせん、素人っぽく見えるのと、ストーリーテリングの整理が良くないので、非常に安っぽく見えてしまったのが残念。監督はサム・エスメイル。

映画が始まると、ある部屋の前に立つ主人公デル。手に花束を持ちそわそわした姿。そして意を決してドアを開けると、画面が乱れて、過去に戻る。

そこは、流星雨を見るために墓地の前に並ぶ人々の列。母が癌だという知らせを電話で聞くデル。前の小太りの女が、勝手に会話に分け入ってくるので、悪態をついている。そこへデートでやってきたキンバリーと出会い、デルは一目惚れする。ここから強行的なデルのキンバリーへのアプローチがスタートするが、この場面は大概しつこい。一方、時は1年後のキンバリーとの再会、6年後のキンバリーとの最後の一夜と繰り返し、場面をきりかえながらすすむのだが、その切り返しが、画面のちらつきで表現するというのがなんとも陳腐。さらに冒頭の小太りの女性は最初だけで、キンバリーの彼氏も冒頭の場面だけで後はおざなりで済ましている。

確かにそれもありなのだが、ちょっと脚本が雑に見えてしまう。タイトルバックの写真の背景もちょっと手抜きに見えてしまい、ストーリー展開の中の入れ替わり立ち替わりのキンバリーとデルのやり取りが、いかにもB級映画のような安っぽさに見えてくるのです。

画面の両端に配置する人物の構図や、背景のちょっと現実離れした景色も、奇をてらった演出を感じさせるがセンスを感じさせない。

別れと再会を繰り返し、現実は次第にパラレルワールの別世界へと誘われる。二つの太陽が昇り、キンバリーは、デルに、実は今の彼との間に赤ちゃんができたことを告げ去っていく。しかし、告白されたデルは、もう一度キンバリーに駆け寄ったかのカットで暗転。え?まだ繰り返すのという感じである。

面白いのだが、監督の独りよがりに見えてしまうのがなんとも残念である。不可思議な世界にはまり込んでいく幻想的なラブストーリーという解説の意味はわかるのですが、少し、観客の気持ちの切り替えを無視した脚本がもったいない一本でした。もっと、見せてくれそうなのに、という映画です。


「タイガー・マウンテン 雪原の死闘」
いかにもな題名の映画です。そう香港映画。そして、大好きなツイ・ハーク監督作品です。いやぁ、人間ドラマとかめんどくさいものは何にもないけど、2時間以上、ほとんどだれずに楽しむことができた。面白かった。

映画は、一人の青年が、故郷へ帰る途中、かつて、この地域で活躍した人民解放軍の武勇伝を思い出すという展開で始まる。そして、時は1946年に。

日本軍が撤退した後、混乱をきたした中国国内。匪賊と呼ばれる盗賊団が、村々を襲い、人々を苦しめている。国の統一を急ぐ政府は、人民解放軍にその討伐の任務も与えていた。

という設定の後、山奥に構える巨大な匪賊の組織に、勇猛果敢な人民軍の兵士が、戦いを仕掛けていくというのが本編。

村を襲ってくるくだりは、「七人の侍」のごとくで、匪賊のアジトを攻めるくだりは、織田信長桶狭間の戦いのごとき展開というのも面白い。

派手な火薬とCGの見せ場の連続と、丁々発止の謀略戦がとにかく面白い。人民軍がわずか三十人足らずなのに、大軍の匪賊を右往左往させる面白さと、絶対に不利にならない徹底した勧善懲悪が、典型的な娯楽作品として楽しませてくれます。

しかも、ラストシーンは、普通の救出劇と一方で、飛行場さえもあったという二つのクライマックスまでわざわざ描くというエンターテインメントの徹底ぶりが、思わず笑ってしまうが、それでも素直に楽しんでしまうのだから、全く中国香港映画は面白いなと思います。
登場人物の名前とかわからなくても、その風貌だけでストーリーを追っていける分かりやすい演出と脚本は、ある意味、勉強してもいいんじゃないかと思うな。本当に楽しかった。