くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スリーピング・ボイス 沈黙の叫び」「陽光桜 YOKO THE CHE

kurawan2016-01-07

「スリーピング・ボイス 沈黙の叫び」
ものすごい緊張感の映画である。ほんの一言口を開いただけで、罪のない身で収監されてしまう世情の中で、登場人物は、ひたすら言葉を発する。その姿をカメラがねっとりと離れることなく捉えるので、画面から目を離せないのである。この緊張感が恐ろしい一本。監督はベニト・サンブラノという人である。

1939年のスペイン内戦が終結フランコ政権による独裁政治が始まった2年後から物語が始まる。共和国活動派の妻や恋人、家族が、次々と収監されて、ろくに裁判もされずに死刑が執行されていた。

妊娠中に収監されたオルテシアンを助けるために、妹のペピータが南部ゴルドバからやってきて本編なのだが、理不尽な扱いを受けながら必死で姉を助けようとするペピータの一挙手一同が、ストーリーの中でピリピリした緊張感を生むのです。

出産まで延期された死刑執行なのですが、最後まで諦めず、様々なつてで姉の釈放を求めるペピーター。姉に初めて会った時に夫への手紙を託されたり、共産党員の恋人ができたりという展開を見せながら綴られる物語は、なんとも言えない胸に突き刺さるほどの恐ろしさを見せてくれます。

結局、オルテシアンの夫は捕まり、拷問の中で死亡。ペピータの恋人になったパウリーノも捕まって終身刑になる。

そしてオルテシアンの死刑執行の日が決まり、産んだ赤ん坊は、善良な看守を通じてペピータに託したオルテシアンは、最後まで信念を曲げずに銃殺を受け入れる。

物語は、非常にシンプルなのですが、終始貫かれた、じっと人物の言葉を捉えるカメラが見事。どこがどうと具体的に書けないくらい、みごとな映像演出、演技演出だったと思います。素晴らしい。


「陽光桜 THE CHERRY BLOSSOM
非常にシンプルで普通の映画なのですが、素直に見ることはできる一品。全体のテンポが実に軽やかで明るい。監督は高橋玄です。

物語は陽光桜と呼ばれる新品種の桜を作り出し、世界に広めることで平和を願った愛媛県の高岡正明の半生を描いている。主演の高岡正明を演じた笹野高史の演技力のみで突っ走るのかと思える導入部ですが、次第に周辺の人々のキャラクターも負けじと追いついてくるし、よくある物語とはいえ、軽いテンポでつないでいく演出が、偉人の話を変人の話で押し通すユーモアを見せせる。

現実的に考えれば、経済的に余裕のあった一家族の話のようであり、一歩間違えれば完全に変人の男の物語である。しかし、あまり嫌味もなく、ただ平和だけを愛したかのように見せる適当さが、この映画を好感を持って迎えられる作品に仕上げた感じである。

見たからどうという映画ではなかったけれど、この程度ならいいかなという一本でした。