くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「人生の約束」「母子鶴」

kurawan2016-01-12

「人生の約束」
良質の一本という感じの作品で、オーソドックスな演出で、古風なドラマが展開する人間ドラマでした。監督はテレビ界の巨匠石橋冠、初劇場映画である。

まぁ、特に秀でたものも見られないが、丁寧に描かれていくシンプルなドラマながら、しっかり見せてくれる。しかし、物語で訴えてこようとしているものは、なぜか心に迫ってこなかったのがちょっと残念。

東京で、実業家として成功した祐馬にかつてのビジネスパートナーで、三年前に袂を分けた航平から電話をもらう。しかし、仕事人間の祐馬は出ようともしない。しかし、ある日、秘書の勧めもあり、富山に住んでいたらしい航平のところへやってくる。しかし、彼はその日死んでいた。

一方、航平の住んでいた街では祭りの山車が隣町に買い取られ、一悶着起こっていた。

さらに、祐馬の会社が、粉飾決算の疑いで、捜査をうけ、すべてを失ってしまう。

祐馬の強引な経営の中で失ったものが、富山の航平の街での祭りを通じて、思い起こされ、人間として再スタートしようという話なのであるが、胸にグッと訴えてこない。それは演出の力不足か、と言われればそれまでで、祐馬の会社の人間関係が掘り下げられていないし、航平の街の人々も生き生きと見えてこない。

もちろん、クライマックスの山車が街中を練り歩く映像、構図は美しいし、映画になっていると思いますが、それも、作品の中での位置付けは特にないように思えます。

もちろん、凡作というほどのものではないのですが、とりたてるほどの映画ではなかったかなという感じの一本でした。


「母子鶴」
若尾文子アンコールの一本。といっても、若尾文子は完全に脇役で、江利チエミの映画に近い。監督は小石栄一だが、助監督に増村保造が入っている。

戦争による悲劇が生んだ母と子の悲哀物語で、当時はこの手の作品もたくさんあったのだろうと思われる映画です。ただ、ストーリーの構成は意外にしっかりしているのは川口松太郎の原作があるためかもしれません。

特に目だった演出も映像も見られない普通の映画ですが、ノスタルジーに浸るには十分の一本で、1952年の世相が見え隠れする意味で十分に楽しむことができました。