くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ピンクとグレー」「ブリッジ・オブ・スパイ」

kurawan2016-01-14

「ピンクとグレー」
面白いかなと期待半分で見に行ったが、終盤に近づくにつれて眠くなる。原作を大幅に改編して映画にしたというから、どれほどのものかと思ったが、ストーリーをこねただけのレベルで終わったという感じでした。ラストの感動も伝わりきらないし、途中のインパクトも弱い。監督は行定勲である。

映画は少女たちのダンスシーンに始まる。それにかぶって、影にいる白木蓮吾の姿。そして白木は首を吊る。そこへ一人の男がやってくる。白木の親友で河田大貴がそれを見つけ、一躍有名人になる。この導入部から、白木と河田、そしてサリーとの三人の少年時代に物語に遡り、この三人のストーリーが描かれていく。

高校時代に、白木と河田は街頭でスカウトされ、芸能界へ。しかし、どんどん出世していく白木と違い河田はパッとしない。そして二人の人生が別れて三年が経つ。

同窓会で再開した白木と河田、会の後、二人で飲み、白木は河田と代わってやるという。翌朝、河田は白木のマンションで目覚め、夜もう一度そのマンションに来ると、白木が首を吊っている。

ここから画面はグレーに変わり、河田は今まで菅野将暉が演じていたが、中島裕翔に変わる。そして、菅田が演じていたのは、別の先輩役者で、首を吊った場面は映画のワンシーンで、白木の物語を映画にしているという設定。白木は柳楽優弥になる。

そして、同様のストーリーが流れ、サリーも別の役者に変わる。菅野の演じる先輩役者は、いかにもすれっからしで、河田になった中島を翻弄する。前半でサリーを演じた夏帆はいかにもすれっからしのケバい女として登場する。

つまり前半のカラー場面は、白木の物語を映画にしているシーンで、後半のグレーが現実だというわけだ。ピンクに彩られた夢の非現実に対するグレーで描かれた現実。この対比として描いたのだろうが、どうも、ラストまで引き込む魅力はなかったという感じです。
原作を読んでないので、わかりませんが、映像として昇華し切れなかったようですね。


ブリッジ・オブ・スパイ
さすがにスピルバーグ監督、見事な一本です。2時間半近くあるのに、決しては画面から観客を離さない。しかしながら、物語に比べて、ラストは家族の物語に収めるあたりは、やはりスピルバーグの世界だなと思う。悪く言えば、大人になれない子供という感じが否めない。

クライマックスの受け渡し画面の構図など、さすがに並外れた感性で描かれているし、サスペンスの味わいのバランス、駆け引きの緊迫感の作り方は職人芸である。でも、アカデミー賞作品賞にはちょっと無理かなと感じてしまった。何かが物足りないという感じなのです。

映画は一人の年老いた男アベルが部屋で自画像を描いている場面から始まる。外出すると、何やら男たちがつけてくる。それを巧みにかわし、道端でスケッチをする。そのベンチに何か文書らしいものが隠されていて、それを手にして自宅に戻るが、FBIが踏み込み彼は逮捕される。このアベルアメリカで諜報活動をするソ連のスパイだった。

この男の弁護人に選ばれたのが、ジェームズで、彼がこの物語の主人公。前半で、公平に正義感を持って彼を弁護する姿が描かれる。そして、アベルは死刑にならず、30年の刑として結審。

5年経ち、CIAがソ連の上空で諜報活動をするため、優秀なパイロットを招集、ソ連に向けて飛び立つが、迎撃されて、パイロットのパワーズが捕まってしまう。さらに、ベルリンの壁を作る際に、アメリカ人学生が東ドイツ側にスパイ容疑で拉致される。

こうして物語の本編の土台が完成、ジェームズは、スパイ交換に東ドイツに向かううことになる。しかし、彼は独自に、学生の返還も組入れようとする。

史実であるから、ラストは無事交換完了し、ジェームズも家庭に戻ってエンディングである。しっかりとしたカメラアングルと、バランスの良い演出、ストーリー構成はさすがに見事である。

アメリカの偵察機ソ連の攻撃にさらされるスリリングなシーンはさすがだし、ソ連のスパイを演じた俳優マーク・ライランスが実に素晴らしく、彼の存在が物語に非常に暖かさを生み出してくれる。

ただ、東ドイツで拉致される学生などの描写が、ちょっと雑と言えなくもないし、ジェームズに依頼してくるアメリカ側の政府組織に厚みがない。さらに、ソ連側の描写はかなり軽く流されている。様々な人物像を全て描き切ろうとした結果、俳優任せになった感じである。

とはいえ、最初にも書いたが、クライマックスの橋の上のカットは賞賛できるし、この辺りを見ると、さすがにスピルバーグはすごい。しかし、ここにきて、やはり、スティーブン・スピルバーグにはさらに上を期待してしまうのです。その意味では、ちょっと物足りない感じがしました。