くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「さらば あぶない刑事」「ブラック・スキャンダル」

kurawan2016-02-01

「さらば あぶない刑事」
このシリーズはテレビ版も含めて一本も見てないのですが、久しぶりの村川透監督作品をみようと出かけた。

村川透色満載のエキゾチックな画面作りと、スタイリッシュな映像は、今なお衰えていないのが嬉しいオープニング。主人公二人が刑務所から出てくるシーンに映画が始まる。光と影を有効に利用したバックに、キラキラと光る大下のスーツと、留置所の奥から現れる鷹山のシーンは絶品。

物語は、中国、ロシア、中南米、日本のヤクザを交えた巨大麻薬組織ができようとする横浜を舞台に、その結成を阻止するべく定年まであと5日という鷹山と大下の二人の破天荒な刑事が活躍するというもの。

テレビシリーズでおなじみのキャラクターは、あるものは昇進し、あるものは引退し、とそれでもちゃんとスクリーンを賑わせてくれるサービスも満点。

派手なガンバトルとアクションを、無国籍風の景色を作り出した世界で展開する物語は、ちょっと普通の刑事ものと色合いが違う。

彼方に光る横浜の夜景、埠頭の景色、シャープな影と光の織り成す世界は、日本映画かと疑うような美学が見え隠れする。これが村川透の世界である。

ラストは、まぁ、おきまりのエンディングで、かなり雑に仕上げていないというわけでは無いが、二人は退職して、探偵事務所というちょっと村川透ファンにはたまらないオチも作って、約二時間、楽しませてくれました。


ブラック・スキャンダル
実在の犯罪王を丁寧な演出とストレートな展開で描いたなかなかの力作。冒頭からラストシーンまで息をつけないほどの重さですが、見ごたえがありました。監督はスコット・クーパーです。

一人の男がFBIの取調室で証言しているシーンから始まり、彼の若きに、ジェームズに気に入られるところへさかのぼる。

時は1975年の南ボストン、地元で羽振りを聞かせるアイルランド系マフィアのボスジェームズ・”ホワイティ”バルジャーの姿。弟のビリー・バルジャーは地元の代議士であり、ジェームズは妻と息子と暮らしている。ここに同郷でFBI捜査官のジョン・コノリーはジェームズと共通の敵であるイタリア系マフィアを叩き潰すことで協力しようと持ちかける。

こうして物語は始まるが、ジェームズは情け容赦なく密告者や敵対する敵を殺し、ジョンに情報を提供して、ライバルを葬りながらみるみる勢力を広げる。
ある日、最愛の息子が病死し、さらに彼の行動に拍車がかかっていく。

ジェームズはジョンを巧みに利用していくのだが、そのあたりが実に微妙で、迫真のリアリティがあるのです。一方、出世のために手を染めたジョンですが、次第に深みにはまり、違法行為であることに慣れてきてしまう自分を必死で正当化していく。

ただ、弟のビリーの描写が若干弱く、せっかくの3人の物語なのに、ジョンとジェームズだけの展開が表に出てしまうのがちょっと残念。これで、ビリーの存在ももう少し物語に登場すれば、もっと深みのある映画になったろうにと思います。

物語は、正義派の連邦検察官が派遣されてきて、ジョンの行動を非難し、ジェームズ逮捕に動くところからクライマックスへ向かっていく。次々と密告者がジェームズの犯罪を証言し、ジェームズは指名手配になるも脱出、やがて2011年に捕まるというエピローグで映画は幕を閉める。

良質の作品ですが、せっかくのビリーの存在をないがしろにしたのがもったい無い。ただそれが悔やまれる一本でした。