くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「市川崑物語」「炎上」

kurawan2016-02-24

市川崑物語
岩井俊二監督が描いた市川崑監督のドキュメントである。
本来、ドキュメンタリーは見ないのですが、この映画は素直に良かった。確かに大好きな市川崑の話だというのもあるが、やはり岩井俊二の感性が生み出したリズムが、市川崑の人生のドラマに見事にマッチしていたのだろう。

妻で脚本家の和田夏十との話の場面では、胸が熱くなり、最後は涙が出てきてしまいました。

市川崑の生誕から映画界へ入るきっかけ、妻との出会い、数々の傑作の誕生秘話、そして遺作となった「犬神家の一族」のリメイク版の撮影風景で映画が終わる。

このドキュメンタリーを撮っている時には、まさかこのリメイク版が遺作になるとは思っていなかったかもしれない。誰もがそう思っていた。しかし、これが人の運命なのでしょうね。

次々と映し出される名作の数々と名シーンを見ていると、また全部見たくなる。サイレント映画のように市川龍のロゴの配置で文字が挿入され、説明が語られていく。そのテンポが実にノリがいいというか、引き込まれていく。いいドキュメンタリを見たなという感想で幕を閉じました


「炎上」
生涯ベストワンのしている三島由紀夫の「金閣寺」を原作にした市川崑の傑作。映画としても、最も好きな作品の一本を何度目かの再見。今回は初デジタルリマスター版である。

何度見ても素晴らしいのは、ラストの金粉が舞い上がりシーンですね。もう息をのみます。

今回は、その映像美より、人間の心理ドラマの面に視点が行きました。どんどん追い詰められていく主人公の心の変化が、次第に外から内に向かい、どうしようもなくなって、金閣を焼くという最後の感情の放出につながっていく展開が素晴らしい。名作とはこういうのをいうのでしょう。