くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章」「マネー・ショ

kurawan2016-03-04

マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章」
前作も素敵な大人の映画でしたが、今回も素敵な大人の物語でした。監督は前作同じくジョン・マッデン

映画は軽快な音楽とともに、ホテルのオーナー、ドネリー夫人とソニーアメリカにやってくるところから始まる。マリーゴールド・ホテルの新館購入のための資金を得るためである。

話を終えてマリーゴールド・ホテルに戻った二人はホテルの鑑定人を受け入れる準備を始める。物語はソニーとフィアンセスナイナとの結婚式までの物語を描いていく。

例により、前回同様の宿泊者たちが織り成す恋と仕事と人生の物語が、素敵な会話の数々で綴られていく。特に会話が素晴らしいのは戸田奈津子さんの翻訳のうまさもあるのでしょう。

物語は、紆余曲折の末に結婚式のパーティをクライマックスに、洒落た大人のエピソードが次々と語られていく。インドの独特の色彩と、リズム感のある音楽と、芸達者な面々の競演で、さすがに見応えのあるドラマが展開。

ラストシーンはドネリー夫人の独り言でエンディング。とっても素敵な映画というのは、こういうのを言うのですよね。そしてみんなに勧めたくなる映画、これがこの作品です。


マネー・ショート 華麗なる大逆転
リーマン・ショックを予見した四人の男たちの実話をもとに描いた作品で、彼らが、サスペンスフルに大金を得て大逆転するという娯楽的な描き方ではなく、彼らを第三者的な視点で客観的な描き方をしているという、ちょっとした秀作でした。監督はアダム・マッケイです。

金融トレーダーのマイケルが、住宅債券で盛り上がるアメリカを冷静に見ながら、その奥に仕組まれた不安定な仕組みと、政府や銀行が作り出しているバブルのような金融市場を分析して行くところから映画が始まる。

債権が債権を生みに、債務が債務を生み、どんどん膨れ上がる姿に目をつけ、忠告するも、誰も相手にしない。そこで彼はクレジット・デフォルト・スワップという取引を仕掛けて、翻弄してやろうとする。もちろん彼に大儲けしようという気はない。正しく経済の現実を知らしめてやりたいだけなのだ。

こうしてこの映画のストーリーは幕を開け、マイケル同様に、アメリカ経済の現状に気づいた3人が投資を行っていく様が描かれる。

次々と飛び出す専門用語はわからないところもたくさんあるが、シンプルなところだけ取り上げていくので、あえて、気にしなくても観れる。このあたりの処理はうまい。

当然実話なので、クライマックス、思うように値段が動かない主人公たちの思惑が次第に史実通りに破綻して行くのだが、「予見した成り行きがうまくいけば何万という人々が路頭に迷うという悲劇を知るべきだ」という伝説のトレーダー役マイケル・ピット扮するベンの言葉と、ラストでマークが利益を得るために売るのをためらう場面にこの映画のテーマが内在している。

細かい展開とカットで次々と描いていく映像はかなりめまぐるしいし、肩が凝るほどに緊張感が途切れない。だからこそ、このマネー・ゲームが映像として具体化するのですが、単なる金融ゲームを、サスペンスとして描いたのではなく、あくまでドラマ性に焦点を当てたのが評価されたのだろうと思える映画でした。

ただ、ストーリー展開としては、前半から中盤までのキレの良さに比べ後半若干マンネリ気味に見えなくもなく、ちょっとダレる瞬間がなかったわけではありません。とはいえ、出色のマネー映画という感じで面白かったです。


「ど根性物語 銭の踊り」
市川崑監督作品ですが、荒っぽい脚本と、雑な演出がとにかくしんどい一本。しかし、手持ちカメラや、振り回すカメラワークにかぶるトランペットなどの管楽器の音楽は、フランスフィルムノワールを思わせる空気が漂い、やはり、ただでは作らない市川崑の実験精神満載の映画といえば映画だった。

ひき逃げをしたトラックを無我夢中で追いかける主人公のタクシーの場面から映画が幕を開け、その腕っ節の強さを買われて、怪しい組織の中もに入れられる。

この組織、闇で悪人を殺す集団で、ボスは訳のわからない外人で、なぜか、逃げられなくなり、加担するも、そのやり方が耐えられず抜けようとして命を狙われることに。

展開がスピーディというより、適当に思いつきという感じで、江利チエミのヒロインも適当な存在だし、なんとも言えない。

結局、敵を倒して自分は海に飛び込んで何処となく泳いでいく。こういう映画も作っていたのかと感心する一本でした。