くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「恋におちて」「ルーム」

kurawan2016-04-08

「恋におちて」
30年ぶりくらいに見直したメリル・ストリープロバート・デ・ニーロのラブストーリー、監督はウール・グロスバード。

初めて見たときも、それほど印象に残った映画ではないが、当然であろう。大人のラブストーリーで、物語というほどのものはないからだ。ひたすら、メリル・ストリープロバート・デ・ニーロの演技力で引っ張っていく作品ゆえでしょう。

クリスマス、大量のクリスマスプレゼントを抱えて本屋に入ったフランクは、夫へのプレゼントに本を買ったモリーと出会う。ただ、荷物を落としてだけの出会いだったが、偶然にも通勤の列車の中で再会、お互いにそれとなく惹かれ始める。

特に問題もないお互いの家庭、しかし、運命の出会いがもたらす、危険な恋の物語が始まる。ひたすら二人の演技力がグイグイとストーリーを引っ張っていくのです。

会う機会も多くなり、ある日、体を合わせる決意をするもすんでのところでモリーが拒否、しかし別れたものの、二人の気持ちは繋がったままなのです。

カメラは何度も二人のクローズアップに寄り、細かい演技で描くもどかしいほどのラブストーリー。このままではいけないと思ったフランクは、ヒューストンに行く決意をし、最後の別れをモリーにしようとするが、お互い妻も夫も、それぞれの夫、妻のことがわかっていた。

そのまま会えないまま別れたフランクとモリー。1年後のクリスマス、戻ってきたフランクは、あの本屋に立ち寄り、なんとモリーに再会。それぞれの夫婦は1年前のあの日以来破綻している。一旦は別れた二人だが、フランクは引き返し列車の中でモリーを抱きしめてエンディング。

キスシーンぐらいしか登場しないラブシーンだが、とにかく、淡々と語られる大人の恋物語は2人の名優の演技力で圧巻と言える。クライマックスの雨の中、フランクの元に急ぐモリーが、踏切を突っ切ろうとして列車を見つけ、すんでのところで急ブレーキするくだりな見事なシーンである。

最近は本当にこの手のラブストーリーが描けなくなったなと思います。主演の二人の俳優があまり好みではないのですが、うまいという点では認めざるをえないですね。


「ルーム」
これは傑作でした。なんといっても、ストーリーの構成のバランスが抜群に良い。だから、時間を感じさせずにエンディングを迎えるし、入れて欲しくない嫌なシーンを一切カットした演出のうまさ、アカデミー主演女優賞受賞のブリー・ラーソンの旨さと、子役の少年の対比がずつにうまい。監督はレニー・アブラハムソンである。

小さな物置のような部屋で、一人の女性ジョイと息子のジャックのカットから映画が始まる。17歳の時に監禁されたジョイは、犯人との子供ジャックを産んで5年になろうとしている。

生まれてこのかた外と世界を知らないジャックは、朝起きると、部屋の中に椅子や洗面台などに挨拶をするのが日課になっている。そして、母の話とテレビだけで世界を知識にしていた。犯人の男は週に一回やってきては、必要な品物を届け、ジョイと寝る。

しかし犯人は失業し、金もないような台詞の後、電気が切られたりすることがあってジョイはある決断をする。なんとかジャックを外に連れ出してもらい、自分を助けてもらうというものであった。

まずは熱が出て重病と思わせて、病院へ行かせようとするが失敗、今度は死んだことにして絨毯に簀巻きにし、捨てに行かせることにする。母と二人で楽しかったジャックにとっては、母の命令自体が苦痛で、何度も嫌がる。この展開が実に切ない。嫌々ながら承諾し、まんまと運び出されたジャックは、母に言われるままにトラックから逃げ出し、近くの男に助けを求めて無事脱出、そして、その証言から、ジョイの小屋も発見される。

この前半部分が実に鮮やかに運んでいくし、無駄なエピソードを挟まずに一気に流れていく脚本が見事。そして、ここからジョイとジャックが立ち直っていく様が描かれるが、映画としてはこちらが本編なのである。

ジョイの父は犯人との子供であるジャックを受け入れられず実家に帰ってしまう。離婚して新しい男性と暮らす母の元で暮らすようになるジョイたち。

最初は戸惑うものの、徐々に順応してくるジャックだが、ジョイは、過度のストレスが精神を過敏にし苛立ち、とうとう自殺未遂までしてしまう。

入院した母に、伸ばしたままだった自分の髪の毛を切って送ってやり、パワーを与えて助けようとするジャック。

同年の友達もできたジャックの元に母ジョイが帰ってくる。ジャックはもう一度、あのルームに行きたいと母に頼む。そして二人は監禁されていたルームに行く。ジャックは、中に残っている椅子や洗面台などに、さようならを言って、母にも言うよう促す。声にならない声でジョイは「さようならベッド」と口が動き、待っていた警察のパトカーの方へ歩いて行ってエンディング。見事なラストシーンである。

二人の主要人物の心の変化が、的確なテンポで描かれていくのでわかりやすいし、この手の映画によくある、マスコミや隣人の嫌なシーンを一切カットして、主要人物の描写に絞ったのが良かった。

前半の限られた空間残ってカメラワークは、脱出して祖母の家に行っても、それほど広々と見せないアングルもうまい。映画のクオリテイも見事な一本でした。