くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ヒーローマニア-生活-」「バナナ」「オマールの壁」

kurawan2016-05-09

「ヒーローマニア-生活-」
ちょっと面白そうな内容だったので、楽しみにしていたのですが、残念な結果でした。オープニングの展開は面白いのですが、それも、細かすぎるぶつ切りのカメラワークと編集で、なんのスピード感も見えない上に、それをカバーするためのスローモーションがテンポを狂わせてしまっている。それでも我慢してみていると中盤から妙な展開になり、どんどん娯楽性が中途半端になってエンディング。でも小松菜奈の綺麗な太ももが見られたからいいかな。監督は豊島圭介です。

黄色いレインコートを着た人間と、主人公中津と土志田が戦っている。そして、物語はこの戦いになる経緯が語られていきます。

コンビニでしがない店員をする主人公中津。商店街もこの店も荒れ放題の架空の街。立ち読みの男を注意したところから、その男土志田が、下着泥棒ながらやたら強いことを目にし、一緒に、地元の正義のヒーローになろうと持ちかける。そこに、金槌で若者を殴打する中年男のおじさん、メガネの女子高生だが、絡んでくる女と、吊るし屋という正義ヒーローとして暴れ始めるのが導入部。

吊るし屋というのは、制裁を加えた不良どもを最後に吊るして去るからである。

そこへ、おじさんが一人の男を紹介し、会社組織にしようと持ちかける。ところがこの宇野という男が曲者で、どんどん正義を表にして荒稼ぎをするようになる。結局嫌気がさした中津たちは反抗するが、おじさんは宇野の手下に殺され、中津たちは宇野の手下の黄色のレインコート男と対決することになりオープニングへ。ところが、実はもう一人異常な黄色いレインコートの人物で喋らない女というのが現れ、最後は小松菜奈扮するカオリが土志田にもらっていた武器で倒して、全てが元に戻りエンディング。

とにかく、映像のテンポが良くないので、スピード感あふれる表向きが、実際にこちらに伝わらない感じで、話は面白いはずなのに、構成のバランスが悪くて、宇野の本性が見えてくる後半頃はちょっと下品になってくる。原作があるので、仕方ないですが、おそらく原作が良くないのかもしれない。映像化するにあたり、見直すのも面白かった気がします。


「バナナ」
面白いのですが、主人公が誰か、微妙にぶれていく感じで、冒頭の岡田茉莉子と津川雅之のバナナの話から、徐々に視点がずれて、最後は津川扮する竜馬の両親の話に流れてエンディングする。監督は名匠渋谷実である。

サキ子と竜馬は仲の良い友達。サキ子はシャンソン歌手になるといい、父親は戦前はバナナの輸入をしていたらしい。竜馬の父親は中国人だが名家で金持ちである。竜馬は車を買う金ほしさに神戸の叔父を訪ね、彼からバナナの輸入権をもらう。サキ子は竜馬と共同で輸入の仕事を始めるが、腹黒い男に竜馬は引っかかり、詐欺容疑で最後は逮捕されてしまう。

のほほんとしていた竜馬の父は、最後に竜馬と留置所を代わってやるために警察に出向くところでエンディング。と物語は二転三転で流れていく。岡田茉莉子のコメディエンヌぶりが抜群で、機関銃のような早口、軽快な仕草に、名演技とはこれだと言わんばかりを見せてくれるから楽しい。

それほどできのいい映画に見えないが、岡田茉莉子の名演を見るだけでも十分に価値のある一本でした。


「オマールの壁」
すぐれた作品であるが、第三国の事情に疎いものにとっては、本当の値打ちは理解していないのかもしれない。しかしなかなかの秀作でした。監督はアニ・アブ・アサドである。

主人公オマールが高い壁を超え、反対側に下りて恋人のナディアに会いに行く場面から始まる。パレスチナには分離壁というものがあり、自由に行き来することができない。その高さはベルリンの壁の二倍以上ある。その壁を行き来しながらオマールが恋人ナディアに会いに行っていた。

オマールはこんな毎日を変えるため仲間と立ち上がる。しかし、捕まってしまい、イスラエル兵殺害の容疑がかかる。そして、裏切り者となり仲間を売ることを条件に釈放される。指示したのラミという男だ。

しかし、裏切り者であることやナディアとの仲がなぜかラミに知られ、仲間の中に裏切り者が別にいることがわかる。さらに、幼馴染のアブジャドとナディアの間に子供ができ、二人を結婚させなければならなくなる。

ナディアの兄を殺害することを依頼されるオマールだが、偶然、アブジャドを交えた諍いの中でアブジャドがアニを撃ってしまい、目的が果たされてしまう。

アブジャドとナディアは結婚、オマールは壁を超えてナディアの家に行く。子供がすでに二人。早産で届けたはずの子供は通常の期間で生まれたと知り、これも策略だったとわかるオマール。そして抵抗軍の旅団のリーダーを教えるという条件でラミと接触したオマールは、手渡されたピストルでラミを撃ち殺しエンディング。

ストーリーとしてのサスペンスの面白さは、なかなかだが、やはりこの作品の場合、パレスチナの現実がみにしみてわかればさらに緊迫感が増すと思う。しかし、その部分を除いても、しっかりと作られた秀作でした。