くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ズートピア」「殿、利息でござる!」「マクベス」

kurawan2016-05-19

ズートピア」(日本語吹替版)
大ファンの上戸彩さんが吹き替えをしているというだけで、日本語吹替版を見る。映画もなかなかという評判を信じて見に行きました。さすがに、駆け抜ける躍動感あふれる映像はディズニーの真骨頂です。面白かった。監督は「塔の上のラプンツェル」のスタッフ。

物語はうさぎのジュディの子供時代。肉食の狐にいじめられるものの、正義感に燃えるジュディは警察官になるのが夢だった。ところが、うさぎが警察官になるなど前代未聞で両親も反対。しかし頑張り屋の彼女は15年後、とうとう、初めてのうさぎの警察官になる。

そして派遣されたのが肉食と草食の動物が楽しく暮らすズートピア。草食動物と蔑まれるのを跳ね返して頑張る彼女の前に現れたのが、狐の詐欺師ニック。行方不明のカワウソの父親探しに始まったジュディの捜査は、実は肉食動物が野生にかえってしまう事件に遭遇。その原因を突き止め、すべてを解決いてハッピーエンドというシンプルな話ですが、歌があり、ダンスがあり、ディズニーらしいユーモア満載に突っ走る躍動感は実に面白い。

駆け抜けるスピード感と、アニメならではの流麗な映像展開。一時の夢の世界に飛び込んでいくファンタジックな映像は、ディズニーらしさを見事にスクリーンに映し出していく。動物ものはどうだろうかという懸念が吹っ飛ぶ一本でした。まぁ、上戸彩の声が聞けたら良いのですけどね。


殿、利息でござる!
もっとコメディ色が強いのかと思ってみ始めたが、意外とドラマ性を重視した作りになっていたのが好感の一本。さすがに中村義洋監督の力量でした。良い映画でした。

一人の老人が瓶に銭を入れているシーンから映画が始まる。入れているのは仙台の浅野屋十三郎。外を夜逃げらしい男が通りかかるので声をかける。そして物語は時が移る。菅原屋が妻を馬に乗せて故郷の仙台に戻ってくるところから始まる。出迎えた男は、その馬を取り上げ、天馬と呼ばれる労役に引いてしまう。

この村は仙台藩の財政難をもろに受けて、夜逃げが横行する始末。菅原屋は穀田屋十三郎と居酒屋で酒を飲んでいるときに、冗談半分に、お上にカネを貸して利息を取れば村が助かるのではないかとつぶやく。ところがそれを間に受け、実際に始めてしまうことになるのが本編。実話なので、千両もの金を集めるには、村の商人を含め右往左往しながら何年もかかってしまう。そして藩に上申するも、一旦は却下される。そのやりとりと銭を集める下りの中に、様々な人間ドラマをコミカルに挿入する脚本がなかなか良い。

一度却下された上申を再考する中で、じつは先代の浅野屋は以前より銭を貯めてお上に上申し、村の労役を減らしてくれるよう画策していたことが明らかになる。冒頭のシーンも、じつは夜逃げする男に銭を与えてやるという展開だったことがわかる。

そして、再度上申すると、ようやく受け入れられるが、さらに金で修めよという申し出に、相場が下がった金の調達にさらに金がいるようになる。

そして、浅野屋はすでに潰れているというくだりから、ようやく、金を収め、仙台藩主が登場して、皆をねぎらい、この時の立役者らのその後を語って映画は終わる。

実話ながら堅苦しさを排除し、適度の笑いを盛り込みながら描いていくストーリーテリングの面白さはなかなかのものです。じわっと胸を打つシーンも所々に散りばめ、単純な娯楽映画にしなかったのがこの映画の魅力ですね。よかったです。


マクベス」(ジャスティン・カーゼル版)
物語は言わずと知れたシェークスピアの四大悲劇の一本。スローモーションや細かいカットとコマ落とし、さらに血をイメージした赤い風景などを多用して、格調の高い作品にするべく演出しているが、どうも今一歩仕上がりきらなかった感じです。監督はジャスティン・カーゼル、主演はマリオン・コテイヤールとマイケル・ファスビンダー

映画はスコットランドで戦いを繰り返すマクベスたちのカットを逆光によるシルエットを多用して描くオープニングから始まる。

戦いの後、魔女のお告げから王を殺し、やがてその亡霊に取り憑かれて、殺戮を繰り返しながら、最後は妃も死に、自らも身を滅ぼす。しかし、その鬼気迫る迫力が今ひとつ足りない。血に怯え、亡霊に狂っていく様が、ただの歴史劇にしか見えないのだ。

妃の死をさらりと流し、追放されたり逃げた家来たちが舞い戻る下や、マクベスが滅びるくだりも今ひとつ迫力がない。

全体に普通のコスチュームものに終わったというところから、いかにシェークスピア物の映像化の難しさを見せつける一本でした。