「探偵ミタライの事件簿 星籠の海」
島田荘司原作のミステリーということですが、完全に原作のストーリーにおんぶした感じの作品でした。面白いのですが、映画としての面白さではなく、活字を読んでいる上での面白さという感じです。つまり映画の脚本としての出来栄えがなってない。だから、後半で、大体の謎が見えてしまう。監督は和泉聖治なので、期待していましたが、傑作とまではいかかったです。
滝壺に、杭に縛られた二人の人間の事件、傍に死んだ赤ん坊が浮かんでいる。その現場に警察がやってくるところから映画が始まる。まるで猟奇事件の映画かと思わせて、場面は天才脳科学者御手洗潔の講義の場面へ。そこから、みゆきが新作ミステリーのために、御手洗に事件を解決しに行こうといくつか提案するシーンへ移る。そして御手洗が選んだのが「死体島」なる瀬戸内海でのミステリー。この時提案される幾つかがいかにもな事件の適当さも失笑になってしまっている。
そして、やってきた死体島で鮮やかに事件を解決、それに絡んで、どんどん事件が膨らみ、絡み合い、冒頭の滝壺の事件まで巻き込んで一つになっていく。確かに鮮やかなストーリー構成だが、それはあくまで小説でのことで、映画としてはその鮮やかさが映像に反映していない。御手洗のカリスマ性も弱いし、脇役がどうも引き立っていない。さらに犯人というか悪役も線が細い。だから結局、ストーリーが薄っぺらくなってしまった。
最後の、違法ドラッグの密造という安っぽさは原作があるのでなんとも言えないが、映画になった時に、いかにも適当な流れになっていて、外国人たちのいる密造工場の描写の安っぽいことこの上ない。こういった様々なところの手抜きが、作品全体を小さくしてしまった感じです。
娯楽映画なんだからこれでいいんじゃないとすませばそれまで、そんな一本でした。
「団地」
全ての束縛や。既成概念。常識を捨て去って、白紙に戻って魅せられてしまう映画、これがこの「団地」です。監督は阪本順治。やってくれましたねという一本でした。
いかにもどこにでもありそうな、寂れた公団の団地を舞台に、息子の死をきっかけに、漢方の店をたたんでやってきた山下夫婦の周りで展開する、団地の日常。それが、完全に間の悪い会話の応酬で描かれていく。ブラックであり、コミカルであり、話芸と呼べる軽快なテンポをあえて排した会話のやり取りがうまい。いや、この間の悪さが、実はわざとであることがラストでわかるのである。
冒頭から、何か不思議な空気で映画が始まる。妙なダジャレとちぐはぐな日本語を話す漢方薬の客真城。彼と山下夫婦の奇妙な会話。あとは団地の住民のどこか普通なのにそれが笑いになる物語に。たわいがない。ただそれだけれ流れていく。
清治は、自治会長の選挙に落選し、いたたまれないと床下に隠れるが、それが、団地の住民に不審がられ、妻が夫を殺したのではないかという憶測が広がっていく。
ある日、真城は大量の丸薬を山下夫婦に依頼。その見返りに、金と亡くなった彼らの息子に合わせるという。
団地の住民は、見かけなくなった清治が殺されたのではないかとの憶測があどんどんエスカレート。一方山下夫婦は二週間で大量の丸薬を完成。やがて真城とその仲間が受け取りにやってくる。なんと彼らは人間ではなく、やってきたのは巨大な宇宙船。
山下夫婦も真城について宇宙船の中へ。しかし、真城が必要と言っていた息子の臍の緒を忘れたので時空をもう一度戻ってもらう。
同じシーンが繰り返され、山下夫婦が夕食の準備をし、ベランダに出て、清治が空を見上げる。最初に出たこのシーンでは清治は月を見上げるが、今回は、彼方に宇宙船らしきものの光の点が飛んでいく。さてと部屋に入り、すき焼きを準備というところへ、普通に息子が帰ってきてストップモーションエンディング。つまり、パラレルワールドというか、「惑星ソラリス」のごときエンディング。
これが映画である。これが映像の遊び、これが創造力の遊びである。久しぶりに遊びきった映画を見た感じがします。あっけにとられるラストシーンに開いた口がふさがらない一本でした。
「スノーホワイト 氷の王国」
「スノーホワイト」の続編というか、前日譚の物語。これといって、驚くほど面白いわけでもない普通の娯楽映画だった。監督はセドリック・ニコラス=トロイヤン。
スノーホワイトによって滅ぼされた女王ラヴェンナの過去の物語。彼女には妹のフレイヤーというのがいて、恋に破れたために、氷のような心となり、愛を信じず、北の国で王国を築く。
強大な王国を作るために最強の兵士ハンツマンを組織し、隣国を取り込んでいく。そんなある時、ラヴェンナが滅ぼされたという知らせを聞き、魔法の鏡を手に入れようとする。
ハンツマンを組織するにあたり、幼い子供をさらってきて育てるが、その中に、のちにスノーホワイトとラヴェンナを倒したエリックもいたという絡みがある。
結局、恋人と別れることになったフレイヤーの過去に実は姉ラヴェンナの嫉妬があったことがわかる。姉は魔法の鏡と一体になっていたらしく、フレイヤーが手に入れた鏡から姉が現れ、姉妹で戦いとなって、何もかもが消えてエンディング。まぁ、これということもない一本でした。