くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「高台家の人々」「冬冬の夏休み」「恋恋風塵」

kurawan2016-06-08

高台家の人々
最近、この手の軽い映画でも、時々胸が熱くなることがある。歳をとったのか、脳細胞が単純になったのか、いろいろ原因はあるが、この映画、最後の本のわずかだけ、素直にワクワクして、胸が熱くなってしまった。監督は土方政人

風邪で四日間会社を休んでいる主人公木絵のシーンから映画が始まる。妄想や空想が大好きな彼女の頭の中のアニメチックなシーンが次々と描かれ、会社に出社すると、名門高台家の御曹司光正が赴任してきたという噂から、みるみる二人が接近する展開へ。なんのこだわりもなく軽い展開で中身のないドラマが続く。

実は高台家は代々、人の心が読める能力があり、これまでそれがプラスになったりマイナスになったりきてきているのである。このお悩み感が全く描き方がしょぼいので、緊迫感がないが、綾瀬はるかの個性全開の木絵のキャラクターがなんとか間をもたせてくれる。

そして、それほどの苦悩もなく結婚式へ。しかし、高台家に嫁ぐことに自信のない木絵は式場を飛び出す。ここからラストまでのわずかが、ちょっといい感じなのですが、とにかけ作品全体の流れは実に間延びしてダラダラしている。テンポが悪いのである。そこを突き詰めればこんな映画みれるものではないのですが。

そして結局、前向きになる決心をした木絵は、封印していた妄想を再開し、光正に笑顔を取り戻してロンドンでハッピーエンド。

本当にたわいのない映画である。


「冬冬の夏休み」(デジタルリマスター版)
ほぼ20年近く前に見た作品ですが、あまり印象が薄く、今回デジタルリマスターされたということの再映で見ることにした。監督は侯孝賢である。ほとんどシーンを覚えていたけれど、この歳で見直すと、とってもいい映画だったと改めてわかりました。

冬冬の卒業シーンから映画が始まり、お母さんが入院するので、夏休み冬冬と妹のティンティンは田舎のおじいさんのところへ行くことになる。素朴な田園風景、さりげなく田舎の子供たちとの交流、村の若者の何気ないやんちゃなはんざいや、頭のたりない女の登場、命の不思議ななどなど、子供の感性に戻って描く侯孝賢の力量がまず素晴らしい。

これという劇的な展開も事件もないのに、どこか懐かしい世界に引き戻され、それでいて、誰もが経験したような見たことがあるような錯覚にとらわれていく。いや、錯覚ではなくて、そういうことが誰にもあった。

そしてやがて、夏休みが終わり、冬冬たちは台北に帰って行ってエンディング。

しんみりと、懐かしい子供時代に浸れる夢のようなひと時の映画、これがこの作品の値打ちだと思います。良かった。


「恋恋風塵」(デジタルリマスター版)
20年ほど前に見たのだが、ほとんど覚えていない。侯孝賢監督のブームの頃の作品である。

のどかで、静かな景色をバックに、淡々とした切ない恋物語が描かれる。幼馴染のアワンとアフン。二人は恋なのかどうかわからないほど自然に交際をしている。さりげないエピソードが淡々と語られる中に、家族の物語や、台湾の静かな緑が挿入される映像は実に美しい。

やがて、アワンは兵役に行くことになる。アフンとは手紙のやりとりが続くが、ある頃から手紙が来なくなるし、届かなくなる。やがて、アフンが郵便配達の男性と結婚したことが知らされる。ベッドで泣くアワンの姿は、実に切ない。

映画は、兵役を終えて、村に戻ってきたアワンのシーンで幕を閉じる。台湾の山々にかかる雲から漏れる日差しのショットでエンディング。静かな幕切れだが、どこか詩的である。これが侯孝賢の世界なのかもしれないが、正直、前半は少し眠かった。