くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「霧子の運命」「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」「ふきげ

kurawan2016-06-28

「霧子の運命」
脚本に木下恵介が参加して作品で監督は川頭義郎である。
やはり木下恵介色が非常に良くでた文芸作品で、安定したストーリー展開と叙情あふれるドラマで心に直接訴えかけてくる感動がありました。

継母に蔑まれながらも、優しい祖父に可愛がられる主人公霧子の幼い日々から映画が始まる。のちに彼女と再会するクラスメートの男の子などの紹介シーンが挿入される。時は昭和20年である。

そして物語は21年、22年と流れ、やがて大人になり旅館の女中で働く霧子の姿となる。かなりエピソードを羅列するだけに見えなくもない展開ですが、大胆に繰り返す移動撮影や、手持ちカメラ、クローズアップなどを多用した演出はそれなりに見応えがあります。

やがて、一人の男と懇ろになるも、彼は殺人を犯し、霧子と心中するべく逃げる。途中霧子は生まれ故郷にやってくるが、かえって村人から追われる羽目になる。逃げまどう霧子を助けたのが、かつてのクラスメートで、顔にあざのある青年だった、

なんとか逃げたものの、男も警察に追われ、飛び降りて自殺を遂げていた。その取り調べで泣きじゃくる霧子のシーンでエンディング。物悲しい歌謡曲が暗転の後も流れる切ない締めくくりを見せる一本。

解説では傑作と書かれているものの、木下恵介の脚本が表に出た映画で、カメラワークもそれなりに独特に見せるものもあり、岡田茉莉子扮する主人公の波乱と切ない半生が胸に訴えかけてくるいい映画でした。


「TOO YOUNG TO DIE !若くして死ぬ」
宮藤官九郎の映画は、ストーリー展開はハチャメチャだが、芯に走っている話は本当に良い。だから、ファンが多いのでしょうね。今回も、ストーリー展開も映像も馬鹿騒ぎのように流れていくが、ラスト、しんみりと感動させる。全く見事だと思う。ただ、やや、展開がくどいのと、今ひとつ、笑いが的を射てこないので、ちょっと終盤しんどかった。

物語は導入部から非常にシンプルである。主人公の大助はこれから修学旅行。大好きなひろ美の横に座り、バス旅行は始まったが、いきなり崖から落ちて、大助は目がさめると真っ赤な世界の地獄。キラーKなるロックバンドのリーダーにいろいろ教えられ、七回の転生で、閻魔大王に合格すれば人間界に戻れると言われる。

最初は、恋するひろ美に会うために頑張る大助だが、いつの間にかキラーKの妻と息子のことが気にかかり、キラーKのために最後は奮闘、無事天国に行くのだが、なんと、天国は無気力な世界で、地獄の方が生きがいがあると気がつく。

そして、最後に地獄に戻ってくるが、最後に閻魔大王がプレゼントをくれる。それは、もう一度生き返り、大好きなひろ美にキスする機会を与えること。鳥になってひろ美とキスをしてエンディング。とってもハートフルで切ないラストに、さすがに宮藤官九郎はうまいなと思わせる。

ただ、最初も書いたが、じゃっかん派手さだけに頼った部分が今回は多く、流れが平坦すぎたのが残念。


「ふきげんな過去」
これはちょっと楽しい映画でした。乾いたセリフが織りなす現実ともファンタジーとも言えない不可思議な世界観が最高。監督は前田司郎である。

主人公の果子が運河でワニを待っているシーンから映画が始まる。かつて地元の女性がワニに赤ん坊を食べられたという伝説があり、ワニの存在を確かめようとしている。傍のボーイフレンドにも愛想がない。

果子は一人喫茶店へ。そこには、人攫いとか言われながらの謎の青年康則がいるのだ。

夜、果子が一人でぼんやり外を見ていると、彼方の屋上から誰かが飛び降りる。ぽかんと見つめる果子のカットでタイトル。このオープニングは好き。

ある朝、死んだとされていた叔母の未来子が18年ぶりに帰ってくる。この登場が、捉えようによっては実にシュールである。全体の会話や流れが非現実的なので、この未来子も幽霊なのではとさえ思えてしまうのだ。そして、未来子は果子の部屋に居候するようになる。

関係はよくわからないが、母が夜の仕事をしているので、果子の家にいるカナと未来子、果子の乾いた会話の応酬が実に楽しいし、果子の母親たちとひたすら豆をむく構図で喋るドライ感も楽しい。

どうやら、未来子は果子の本当の母親であるらしい。このさりげない告白をドライに受け止める果子もまたいい。

未来子は爆弾を作るからと、かつて事件のあった家のトイレの底から硝石を掘り出す。そして爆弾を作るが、最初の爆発が失敗。カナがもう一度そばに行くと爆発が起こり、大怪我をする。この展開もある意味ブラックなコメディ仕立てになっている。

ある夜、果子が、ベランダを見ていると、未来子と康則が立っていて二人でさよならを言うように飛び降りる。そして翌朝、未来子はいなくなる。全くファンタジーだ。しかし、果子が康則のマンションにいるとなんと未来子がいるのだ。普通この展開ではいないでしょうと詰め寄る果子。そして、傘で未来子を突き刺す。

未来子はどうなったか不明のまま、カナと果子が運河を見下ろしている。どうやらワニが捕まったらしい。二人でつまらないなとつぶやいた途端、ワニは逃げる。思わず狂喜する果子のカットでエンディング。いいなぁ、こういう映画は最高に楽しめます。

二階堂ふみ、カナを演じた山田望叶小泉今日子の掛け合いが実に楽しい。とにかく、ある意味ハマる一本でした。