くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「森山中教習所」

kurawan2016-07-15

森山中教習所
不思議な空気が全編を覆った青春ストーリー。どこか懐かしくて甘酸っぱいお話なのですが、背後に流れる現実というリアリティも含んだ作品。それほど長くないのに、やたら長く感じる映画でした。監督は豊島圭介です。

映画が始まると一人の女性松田千恵子のアップ。向かいに座るのは主人公佐藤清高。付き合ってる風で付き合っていない二人。別れ話をしている風である。松田は大盛りの牛丼を頼む。この二人のカットがこれから何度か出てくる。

一人になった清高が自転車で夜の街へ。といっても田園地帯の片田舎。突然車が飛び出してきて清高は跳ねられる。運転していたのは轟木というヤクザ。清高をトランクに乗せて処理しようとするが、なんと清高は傷一つなく、しかも事故にあったことさえ忘れている風。車がとまたところは、この街の非公認の自動車教習所で、轟木の親分が轟木に免許を取るために入学手続きをしていた。清高に口止めするために、教習所の金を出してやる親分。轟木というのは清高の高校の同級生だとわかり、こうして青春ストーリーが始まる。

この教習所、とにかくコミカルで個性的な面々が集まっている。それは経営者側も生徒側もである。そんな中、教習所の女教官サキに恋心を持ち始める清高。何事も前向きで、まっすぐで、脳天気な彼のキャラクターと常に寡黙でクールな轟木の会話が楽しい。

やがて仮免許、本試験と進む中、轟木にはヤクザの後を継ぐという縛りが彼を悩ませている描写が、そして清高の父は無職で一日中テレビゲームをしていて、面接に失敗すると荒れるという家庭内の不穏がカラッと描かれていたりする。さらに、教習所もこの日を最後に閉所、清高の一夏の恋も終わる。

やがて本試験も合格し、二人は試験会場で、轟木はヤクザの車の運転手になり去っていく。清高は松田に祝ってもらう。そして三年後、松田と清高は結婚して故郷に戻ってくる。踏切で、ヤクザの運転手をしている轟木とすれ違ってエンディング。

淡々と進む物語にちらほらとユニークなシーンが挿入されているのだが、今ひとつ全体にリズムを生み出さないため、映画が長くなってしまうのです。もう少しポイントを絞って展開させればそこそこになった気がするのですが、ちょっともったいない一本でした。