くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スパイ・ゾルゲ 真珠湾前夜」「ホース・マネー」「花荻先

kurawan2016-07-27

スパイ・ゾルゲ 真珠湾前夜」
第二次大戦前夜、世界大戦を前に世界中がスパイ戦を繰り広げていた時代。日本に潜入していたドイツ人のスパイ、ゾルゲの物語を描いたサスペンスタッチの娯楽映画である。監督はイヴ・シャンピ

ソ連の密命を受けたゾルゲが親独的な立場を利用し、ソ連に日本の情報を次々と届けていく。対する日本の情報を担当の士官藤森大佐が、スパイを突き止めるべく情報戦を駆使していく。ある意味この丁々発止がなかなか面白くできているのも事実である。

映像的に特に優れているという風ではないのですが、緊張感が途切れることはなく、相手の先を次々に読んでいこうとするゾルゲと、そんな彼に巧みにユキなどを使って探ろうとする藤森大佐。しかし、ひとまわり上手のゾルゲに最後の最後、真珠湾攻撃の情報を世界に発信させてしまう。

稀有な洞察力で世界の情勢の先を読んだゾルゲの人物像が見事に描かれているのも確かです。決して、傑作というわけでもない一本ですが、一つの仮説の一つとしてのゾルゲ事件のあり方が見えている意味で、見て損のない映画でした。

2時間を越えるのに、退屈はほとんどしなかったという点は良くできていたともいうのかもしれません。


「ホース・マネー」
こういう映画は嫌いではありません。絵は綺麗だし、構図もしっかりしている。ただ、ややシュールなので、正直退屈です。物語も解説読んでなかったら多分わかりません。でも、クオリティが高いのは納得できます。

一人の男ヴェントーラが暗い廊下の奥から歩いてくるところから映画が始まる。光を最小限の部分だけにスポットとして当てて、ベッドに横たわる彼の姿と彼の周りに現れる様々な人物との会話で物語は展開していく。

現実なのか回想なのか、あるいは心の中の想像なのか、ほんのわずかな空間で展開する物語は実に舞台劇の如しである。

セリフが必ずしも口から漏れるわけではなく、ただ人物が存在しているだけで言葉が聞こえたりもする。俳優の動きもない。しかしスクリーンに映される画面の構図は絵画のようにしっかりとしているのである。

解説では、今にも死を迎える一人の男の回想劇であると書かれている。つまりそういうことなのである。次々とカットが変わるかと思えば長回しにシーンが展開する。崩れた事務所やエレベーターの中、兵士が現れ、突然夜の路地になり、病院になり、遥か彼方に続く廊下になったりする。それぞれの場面で彼は語りかけ会話をする。

そして、最後にある建物から出て行って暗転エンディング。本当に解説がないとわからない一本だが、ただ移りくる映像と展開を感性だけで見ているという楽しみもできる作品である。才能がなせる一本と言えばそれまでですが、面白い作品でした。


「花荻先生と三太」
鈴木英夫監督特集の最初の一本。古き良き日本映画という感じが清々しかった。

物語は山奥の山村の小学校に一人の新任の若い先生がやってくる。先生の名前は花荻先生で、地元のいたずら少年三太らとの交流を通じて描かれる学校ドラマである。

猫や祭りなどのたわいのないエピソードの後に、例によって先生は都会へ行くことになり、別れの場面へ。バスに乗った先生を生徒たちが延々と追いかける。やたら長いラストシーンだと思ったら、とうとう先生はバスを降りて三太らと学校へ戻るという展開へ。つまりある意味ハッピーエンドなのかな。

でも、正直、先生は都会へ戻ったほうが長い目で見たら、どう考えてもいいと思うが、そこはかなり無理やりのラストシーン。こういう映画を見ると、いかに「二十四の瞳」がすごい映画だったかがわかりますね。

でも、どこかノスタルジックに画面を楽しめるだけでも、十分今見る価値のある一本でした。


「不滅の熱球」
日本プロ野球黎明期、巨人軍の名投手として名を馳せた沢村栄治選手の半生を描いた物語。監督は鈴木英夫である。

戦前、まだ職業野球がプロとして認められ始めた頃、巨人軍に大投手として君臨していたのが沢村栄治である。物語はそこから始まる。

恋人が見にきているとやたら張り切るが、その仲を反対されるとてきめん成績に響くという人間味あふれる人物像として描いている。

その全盛期に戦地に行くことになり負傷して戻ってくる。しかも、なかなか立ち直れなかったが、恋人と結婚することで、立ち直る。ところが、そんな折、召集令状が来て、そのまま戦地へ。そしてフィリピン戦線で戦死する。

菊島隆三脚本であるが、妙に物語が間延びして見えるのは、時代の違いゆえかどうかわかりませんが、解説に書かれている名編と呼ぶほどの作品には見えない。しかし、球場のシーンはさすがに圧巻で、現代のドーム球場にはない解放感と熱気は素晴らしい。

やはりクラシック映画の持つ映画らしさを堪能できる作品であるし、見ごたえのある作品でした。