くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「約束」「目白三平物語 うちの女房」「サラリーマン目白三

kurawan2016-08-01

「約束」
かつてはこういう名編と言える映画がたくさんあったなぁと思えるようなとってもいい映画でした。監督は斉藤耕一

長焦点カメラを多用して背景を完全にぼかした美しい浮かび上がるようなカット、手持ちカメラのアクティブな映像、人物の服装の色彩にこだわった画面作りなど映画全体の映像美も素晴らしい一本でした。

ある公園、子供達が走り回っている。色とりどりの服装に身を包んだ子供たちのシーンが実に美しいオープニング。カットが変わると主人公蛍子のアップが画面の端に配置されたタイトル。

模範囚である蛍子は、特別に許されて、北の街に母の墓参りを許され列車に乗っている。横には監視のための看守が座っている。そこへいかにもな軽そうな一人の青年中原朗が座るところから本編が始まる。馴れ馴れしく話しかける朗を最初はあ疎ましく思っていた蛍子だが、いつの間にか心を惹かれていく。

朗は銀行強盗を行い、仲間内と示し合わせて、北の町で落ち合う約束らしい。その途中で蛍に会ったのだ。調子のいい朗に翻弄されているうちに、いつの間にか二人は恋に落ちていく。

墓参りの後、待合で約束をするが、朗は仲間同士の諍いで傷害を起こし逃げたため、時間に遅れる。しかし、なんとか蛍子たちの帰りの汽車に間に合い、再び列車の中で行動を共にする。蛍子は、朗に自分の境遇を語り、8時までに刑務所に戻らないといけないと告げる。

刑務所についた朗たちはさいごにラーメンを食べ、蛍子は2年後にあの公園で待ち合わせようと約束をして建物の中に消える。しかし、朗は、蛍子の差し入れの服を買いに入った洋品店で刑事に捕まる。

2年後に、公園で待つ蛍子。しかし、朗は来ることはない。ラストシーンが寒々としているが、切ないエンディングに心を打たれてしまう。大人の恋という一つの形に胸が熱くなる一編である。いい映画でした。


目白三平物語 うちの女房」
シリーズ第3作目で、唯一佐野周二が主演をしている一本。1957年の製作年度の世相を垣間見れるノスタルジックな映画です。監督は鈴木英夫

国鉄職員目白三平は、年に一度の温泉一人旅に出かけるところから映画が始まり、近所の八百屋の娘との浮気騒動やらを交えて、何気ない平凡なサラリーマンの家庭を描いていく。

子供達が親の姿を真似てダンスをしたり、目白三平が若い二人の間に挟まれて、それとなく心の中でつぶやくシーンなど、何気ないシーンに鈴木英夫の演出が光るところがなかなか魅せられる作品で、たわいのないエピソードが綴られますが、当時の世相が本当によく出ている感じです。

貧しい親子の話や、見合い結婚に悩む娘、ダンスパーティにときめいてしまう古女房のなにげなさが、心を暖かく包んでくれます。

決して名作ではないのに、どこか、見てよかったなぁといい気持ちになって劇場を出ることができる感じの映画でした。


「サラリーマン目白三平 亭主のためいきの巻」
シリーズ最終章、軽妙でさりげない日常を描いて、ラストでほんのり胸を熱くするという、なんか、心があったかくなる作品。監督は鈴木英夫です。

国鉄マン目白三平が例によって妻の毒舌と息子の屁理屈にもめげずに毎日を生きる姿から映画が始まる。雨降りでしみる靴でも買い換える金はなく、下戸ゆえに会社の宴会でも割が合わない。突然会社にかかってきた遠縁の姪とのほのかな恋心の話を発端に、このシリーズのパターンであるエピソードが羅列され、当時の世相が見え隠れする展開に癒される映画です。

養老院に出した息子の手紙のエピソード、押し売りに来た老人になけなしの小遣いでゴム紐を買ってやったり、人情味あふれる家族愛の話はやはり胸を打つものがあります。

今となっては忘れかけている懐かしい下町の人々の温かい人間味がとっても心地よい感動と笑いになって伝わってくる様は、ある意味ものすごい見応えがあるかなと思えるのです。

しかも、随所に見られる鈴木英夫のちょっと秀でた演出の妙味も映画として面白いし、見て損のない、いや見ておいてよかった一本です。楽しかった。