くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブレイク・ビーターズ」「ハートビート」

kurawan2016-08-30

「ブレイク・ビーターズ」
ダンス映画なのにこれだけ乗らない作品も珍しいものです。確かに東ドイツを舞台にして、社会的なテーマを描いているというのは分かりますが、主人公たち若者が踊るダンスシーンがいつまでたっても盛り上がってこないのはどういうわけでしょう。カメラワークが悪いのか演出が悪いのかわかりませんが、どう見ていいのかわかりにくい作品でした。監督はヤン・マルティン・シャルフという人です。

1985年、東ドイツに住む18歳のフランクは体操の素質を見込まれ体操の練習に勤しんでいるシーンから映画が始まる。しかし、どこかしっくりこない彼は、ある日テレビで西側のテレビを見ていてブレイク・ダンスに心惹かれる。。

早速、映画館に行き「ビート・ストリート」という映画を見て、見よう見まねで始めるダンス。その場には、体操教室でいつも一緒のメンバーたちもいた。早速彼らは路上でダンスの練習を始めるが、西側のダンスということで政府側が懸念を感じ始める。この辺りの展開が実にしょぼいのだ。

若者たちが曲に合わせて踊る場面も今ひとつなのだが、それに懸念を示し会議をする上層部のは描写も実に薄っぺらい。結局、もどかしいほどに盛り上がらない。

東ドイツの全国で広がり始めたブレイク・ダンスを止めようがないと判断した政府側は、これをプロパガンダにするための画策を始める。そして、いかにも国が認めたショーダンスという位置付けで、フランクたちに資格を与え、政府のイベントに出演させるというプロ集団という地位を与える。

しかし、資格のないメンバーたちのグループは路上で踊っていて警察に捕まったりするのだ。

そして最後の最後、音楽番組の大舞台で踊ることを半ば強制されたフランクたちは、そこで半裸になり、反抗をする。この展開もあまりキレがないのです。フランクと父親の確執から相互理解となるラストの展開も適当で、一向に心に迫ってくるものがない。音楽映画で、ここまでビートに乗れなかったらしょうがないなと思える一本でした。


「ハートビート」
ダンス映画はこれでなければいけません。ダンスシーンがとっても楽しいし、映像のテンポもリズミカルで、映画全体が躍動感にあふれています。やはりそれなりの素養のある役者を入れて、トップクラスのダンサーなどを揃えたのも成功の結果でしょう。少々ストーリーテリングに難はありますが、そんなことはそっちのけに最初から最後まで楽しめてしまいました。監督はマイケル・ダミアンです。

軽快な音楽と細かい映像のカットバックを繰り返しながら、主人公ルビーが名門音楽学校にプロのバレエダンサーになるためやってくる。才能を認められ奨学生としてやってきたのだが、そのレベルの高さに圧倒される。

そんな彼女は、行き帰りの地下鉄のホームで大道芸のように曲弾きをするバイオリニストジョニーと知り合う。ジョニーの住む部屋の階下にはポップダンスのチームがいて、いつも卓越したダンスを披露している。彼らの演奏やダンスシーンがとにかく抜群なので、それだけでも見た甲斐があると思えるし、その見事さを理解した上でのカメラワークも素晴らしいので見ていてワクワクしてくるのだ。

ある日、駅の中でダンスの騒ぎの中、ジョニーはルビーを助けたため、バイオリンを盗まれる。しかも、グリーンカード発行の手配をしてもらう弁護士が実は詐欺で、それにもかかり落ち込むジョニー。

一方ルビーも、思うように技術が上がらない上に、ルームメイトジャジーの夜遊びもあり、奨学金が止められそうになる。

そんな時、弦楽器アンドダンスコンクールの大会のチラシを目にし、ルビーはジョニーと出る決心をする。

一方、ルビーに想いを寄せる音楽学校の生徒でエリートバイオリニストもこの大会に挑戦するといい、恋のバトルと演奏のバトルというクライマックスになる。

中盤で二人のバイオリニストが競演するシーンなどもあるが、ここも素晴らしい映像に仕上がっているし、組み入れられるダンスシーンも見事なので、見ていて本当の盛り上がるのである。

ジョニーは階下のダンスグループも交えコンクールに参加、見事優勝してエンディングになる。しかもライバルもその優勝をたたえるというラストが実に爽快で見ていて気持ちよくなる。余計な嫉妬や妨害などのありきたりを排除し、一流を目指す人々のストレートな物語という設定が成功していると思います。

もう一回見ても楽しめるのではないかと言える一本でした。楽しかったです。