くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「セルフレス 覚醒した記憶」「後妻業の女」

kurawan2016-09-01

「セルフレス 覚醒した記憶」
前半は非常にリズム感があって、映画に音楽を感じる。さすがにターセム・シン監督の才能をうかがわせるのですが、真相がわかって、どちらかというとアクションの展開に変わってからが、ちょっと間延びしてしんどい。とは言っても全体にいい感じに仕上がっているちょっと感じのいい映画であることは確かです。面白かった。

建築王といわれ、一代で事業に成功した主人公ダミアンのアップから映画が始まる。しかし彼は余命半年と宣言され、ホスピスの治療のもと、最後の仕事をこなしていた。ただ一枚の名刺が気にかかる。それは人間の意識をクローンで作った人間に移植して命を得るという組織の存在だった。

体の衰えがどうしようもなくなったダミアンは、その会社を訪れ、オルブライトという代表のもと施術を受ける。そして一人の若者としてよみがえる。リハビリの後、退院したダミアンはバスケットをし、若い女性を抱き、かつての若さを取り戻した。ただ定期的に薬を飲まないと幻覚に襲われる。この辺りから、リズミカルな音楽シーンを挿入しながら映像が踊るシーンがとっても楽しい。

しかし、ある時、飲み忘れたために見た幻覚の中に女の子や女性を認め、その謎を追い始める。実は、クローンと思われていたのはマークという若者で、娘の手術のために自らの体を売り、資金を得たことを知る。しかも定期的な薬を飲まなければ、マークの意識になりダミアンは消えるのだという。

ダミアンはマークの妻と娘のところを訪れ、真相を話すが、オルブライトの組織が彼らの命を狙い始める。この辺りからアクション映画の様相を呈してくるが、若干ストーリーにリズムがなくなり間延びが見える。

結局オルブライトたちを倒し、ダミアンは隠していた資金をマークの妻と娘に与え、最後に彼は薬を飲むことをやめ、マークを生き返らせ、マークの家族の幸せを作り出すことで映画が終わる。

前半のリズム感は後半で押さえた演出をし、ドラマティックに終わらせようとしたのが、ちょっとしんどくなった気がするが、素直に見れば面白い映画だったかなと思います。


「後妻業の女」
痛快ピカレスクロマンという感じの娯楽映画の佳作。なかなか見せてくれますね。登場人物全員のキャラクターが立っているのが楽しい。ただ、あと一歩迫力が足りない。もっと、スクリーンから飛び出してくるような豪快さ、大胆さがあれば傑作になったろうにという映画でした。監督は鶴橋康夫です。

映画は2000年、主人公小夜子と結婚相談所の所長柏木が次々とターゲットを射止めるくだりがスピーディに紹介され、そのままタイトル、そして本編に進む。この導入部のテンポが実にいい。一気に引き込んで、あとは物語の中心になる中瀬のエピソードに流れこんでいく。

ろくに世話もせず、中瀬が死んだことで遺産を全て手に入れるための公正証書を持ち出す小夜子に娘二人が弁護士から探偵を紹介され対抗するのが本編になる。ところがこの探偵も悪人だったという終盤から、あわや小夜子は息子に殺されたのかというくだりから、実は生きていたというラストシーンだが、そして悪行は続けられるというエンディングまで、爽快である。

まさにピカレスクコメディというタッチの作品で、ストーリーのテンポといい、妙なジメジメ感を排除した割り切りといい、作劇が見事である。絵作りに凝ったものはないものの、大竹しのぶ豊川悦司の奮闘ぶりがなかなかで、見ていて、応援したくなってしまう。

ただ、残念なのは大阪弁が弱いためにスクリーンからほとばしる下品さが見えない。そのため、台詞ひとつひとつにバイタリティがなく、展開は面白いのに、どこか抑えられて見えてしまったのがちょっと残念。でも面白かった。