「太陽のめざめ」
物語がラストに向かっていかない繰り返しの連続で、とにかくだらだら長い。しかも、暴力的な少年マロニーの教育係となるヤンの存在感も見えないし、主人公らしい判事のフローランスも際立ってこない。ただ、何度やっても喚き散らすことを繰り返すマロニーばかり。しかも音楽センスの悪い演出が余計に作品のリズムを狂わせてあらぬ方向に向かわせる。妙な作品だった。監督はエマニュエル・ベルコという人です。
映画はフローランスという判事の前で、一人の少年マロニーが母親に置き去りにされるところから映画が始まる。それから10年、非行を繰り返すマロニーが再びフローランスの前に現れる。施設の送られたり問題を起こしたりを繰り返すマロニーがひたすら描かれる。そして施設で、テスという女性と恋に落ちるが、この描写も弱く、ひたすら切れるマロニーの描写ばかりが目立ったままラストまでいく。
テスが妊娠し、一時は自暴自棄になるマロニーだが、ラスト、子供を抱いたマロニーがフローランスを訪ねる。この日フローランスは退官となる。出会っての10年間のフローランスとマロニーの話という作り方なのだろうがいかにもしつこいだけで、物語の根幹が見えない。その上、背後に流す音楽がミスマッチで、作品を引き立たせない。とにかく長く感じてしまうのである。
「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」
前作も相当面白かったが、今回も負けず劣らず面白かった。ただ前作ほどビジュアルな面がかなり抑え気味になっていたというか、ネタが切れていたのかという感じです。監督は前作から変わってジョン・M・チュウという人です。
今回は、大金を盗む華麗さというより、ハイテク企業からのチップを盗むというどこか「ミッション・インポッシブル」のような話なので、派手さが若干薄らいだのが、前作ほどの華やかさが感じられない原因だろう。
もちろん、華麗な映像に彩られたマジックシーンがいたるところに登場するし、見ていて飽きないのですが、黒い陰謀という前提が、画面全体にシリアスさを作り上げたものでしょう。しかもフォースメンを陥れる天才科学者ウォルター・メイプリーの存在感がいかにも薄い。演じたダニエル・ラドクリフに毒がないせいだろう。要するに悪役が際立たないため、主人公たちが浮びあがらないという展開になってるのが残念。
とは言っても、二転三転する展開と、マジックなのか現実なのか目くらましにあっていくストーリーはやっぱり面白い。やはり、CG全盛の今でこそ作れる一本だと思います。面白かった。