くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ザ・ギフト」「手紙は憶えている」

kurawan2016-11-04

ザ・ギフト
どうにも、後味の悪い映画でした。最近はやりの、隣人が異常者というパターンの映画ですが、前半はともかく、後半がどうにもスピード感に欠けてしまってどうしようもない上に、途中でなんとなく見えて来たラストがいかにも、嫌な感じで参った。監督は俳優のジョエル・エガートンです。

いかにも幸せそうなサイモンとロビン夫婦が引っ越してくるところから映画が始まる。買い物をしていると、ゴードという男が近づいて来て、サイモンの高校の同級生だという。なにやら不穏なこの男、図々しくも、サイモンの留守の時に突然やって来てはロビンに余計なプレゼントをしたりする。しかし、執拗にゴードを悪者にするサイモンの様子が、実は悪者はサイモンなのではないかと思わせるあたりの演出は見事である。

ある日、ゴードに招待され、彼の自宅に行くと、ものすごい豪邸で、しかしこれを機会に付き合いを止めようとサイモンが迫ると、不気味な空気が広がる。さらにこの邸宅も勝手にゴードが使ったものなのだ。

しかし、その後もロビンは、ゴードがくるのではないかと怯え始め、物語は後半へ。不安なロビンはある日気を失って倒れる。そして、時がたち彼女は妊娠し、サイモンも出世して行くが、ロビンのお腹が大きくなった頃、ほころび始める物語へと流れて行く。

実は、サイモンはありもしないことを言ってゴードを貶めたことがわかり、さらに、仕事でもライバルを貶めて地位を奪ったことが見えてくる。

ロビンはサイモンに、出産後の病院で、別れ話を切り出し、サイモンが家に帰るとゴードからプレゼントが届いている。それは、生まれた赤ちゃんが実は気を失った時にゴードがロビンに迫ったかのような映像。

そして、その疑心暗鬼のまま、サイモンが赤ん坊を抱くロビンを見つめてエンディング。要するに復讐劇だが、どうもわだかまりが残るし、ロビンを巻き込んだり赤ん坊をそのキーネタにしたのはちょっと趣味が悪いと思う。そんなわけで、後味のよくない映画と書かせていただきたいです。


手紙は憶えている
なるほど、アトム・エゴヤン監督らしいストーリー展開の作品ですが、冒頭の導入部は面白いし、ラストの畳み掛けは面白いのですが、途中のエピソードの処理が非常にだるくなってしまう。これも彼の色だと言われればそれまでですが、どうも中盤にキレがないので、しんどいのも事実だし、主人公のゼブが眠ると記憶をなくしてしまうという設定がいまひとつ生きていないにはちょっと残念。でも映画のクオリティはさすがに見事です。

ある老人ホームでゼブが目を覚ますところから映画が始まる。死んだ妻の名を呼ぶが、死んだことも忘れている。親しいマックスに説明され、やがて七日の喪があけた日、旅立つようにと手紙を渡す。目的はマックスとゼブの家族をアウシュビッツで殺したナチスの男を抹殺すること。

ゼブが手紙の通りに銃を手に入れ、ナチスの男を探し始める。途中記憶を失いながら、そして人違いを繰り返しながら、やがて目的の人物に出会い、銃を向けて、収容所にいた頃の本名を名乗らせようとするが、実はその人物こそゼブであり、銃を向けられた元ナチスの男とゼブは同僚だったと説明される。そして、その証拠を突きつけられ、ゼブはその男を殺し自ら自殺する。この辺りの畳み掛けの処理のうまさはさすがである。

そして、老人ホーム、マックスは自分の家族を殺したナチスの二人の隊員への復讐を成し遂げたと呟くのである。要するに、この男がゼブを操って、自らの復讐を行なったのだ。

ゼブが途中で、目的の男の息子らしい警官に会い、コレクションしているナチスの制服をしげしげと眺めたり、様々なところに伏線が張り巡らされて、実は彼こそが探している人物なのだとわかるのですが、それはラストを見て振り返ってのことである。こういうところは本当に上手いなと思う。

こうして振り返ると、途中で会った少年や様々なところが伏線となっているサスペンスである。この辺りはアトム・エゴヤンの映画の魅力だろう。ただ、せっかく記憶をなくすという設定がもう少し生きて入ればもっと面白くなったろうにと思うのです。でも、面白かった。

主人公はクリストファー・プラマー、マックスはマーティン・ランドーである。いやぁ、懐かしいし、おじいになったなぁと思いました。