くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「溺れるナイフ」「ボクの妻と結婚してください」

kurawan2016-11-09

溺れるナイフ
細かいカットをジグソーパズルに組み合わせながら、感性だけで物語をグイグイと引っ張っていく演出がちょっと面白い作品。これで役者がそれなりの演技力があれば佳作に仕上がったろうに、小松菜奈が非常に良くないために、相方の菅田将暉さえも色あせてしまった。しかも脇役にもう少し芸達者を固めればそれなりに見れたのに残念。

主人公夏芽がモデルの仕事をしているカットから始まり、両親が田舎の旅館を継ぐために里帰りする車の中へ。そこは、昔ながらの漁師町で、土地の神主で、一帯を所有する地主のコウと知り合う。

シンプルな話なので、ひたすら時間や空間を前後させながらの細かい編集で物語に味を見せていく。

コウと夏芽はお互いに惹かれあってくるのですが、その心の絆が全く見えない。明らかに小松菜奈の演技力不足である。

祭りの夜、夏芽のストーカーらしいファンが彼女を連れ去ってレイプ未遂を起こす。その現場に駆けつけたコウは結局彼女を助けられず、駆けつけた若者たちに助けられるのだが、この事件で二人は別れてしまい、夏芽もあらぬスキャンダルで芸能活動も下火になる。

そして時が経ち高校生活になる。夏芽はコウに心が残っているのだが、コウはどんどん彼女から離れていき、そんな夏芽に大友という同級生が近づき、友達以上恋人未満の付き合いを始めるのが後半。とは言っても、時に現れるコウの姿に夏芽が揺れるのだが、どうにも心の機微が見えない。

そして、意を決した夏芽は映画の話に乗り東京へ戻ることに。そしてまた祭りの夜が来た。ところが荷造りを終え、一人家に残った夏芽に、あのストーカーが再び現れ、そこへコウが駆けつける。級友のカナがそれをコウに告げて、助けに来たのだが、この場面、夏芽の幻想と現実が交錯し、一瞬、ただの夢のような展開もある。

夏芽が目が冷めると傍に誰もいなくて、一人外に出るとカナがやってくる。明日の朝、全てを海に沈めると。つまりコウがストーカーをナイフで殺したのだろう。

やがて、夏芽は東京に旅立ち、成功を収める。出演した映画のラストシーンの相手役がコウに変わって、そのはしゃぐシーンでエンディング。

夢と現実と幻想が交錯し、細かいカットの繰り返しと、カットバックなどを多用した、感性の映像が散りばめられる作品で、ちょっと面白かったが、ストーリーテリングの弱さ、役者の演技力が十分引き出されていたい点が残念な一本でした。


「ボクの妻と結婚してください」
織田裕二の熱演に涙が止まらないラストが印象的で、さらに吉田羊のうまさを垣間見る映画でした。もっとつまらない映画かと思っていたのですが、これが結構泣いてしまいました。監督は三宅喜重です。

放送作家の主人公三村は、ある日検診を受けてすい臓がんで余命半年と告げられる。どうやって過ごそうかと悩んでいた彼は、ある日、妻の結婚相手を見つけることを思いつく。そして、知り合いで結婚相談所の社長を巻き込み計画がスタートする。

浮気しているところを妻に見せて、離婚を迫る一方で、理想的な妻の相手を探す。しかし、ほどなくして、計画はバレてしまい、理想と思った男性伊東にも断られる。

しかし、三村の必死の気持ちが伝わったのか、伊東は見合いを承諾、三村の妻と付き合い始める。そして、三村の余命があとわずかとなった時に、伊東と三村の妻彩子の疑似結婚式を行う。

ここで感きわまる織田裕二の演技が抜群で、思わずスクリーンに引き込まれてしまいます。

やがて、三村は他界し、実は伊東が見合いを決心したのは、夫の思いを叶えようと、彩子が再度伊東に頼んだためだったという真相が映され、彩子と息子の幸せな二人の生活が描かれてエンディング。

よくある御涙頂戴ものかと考えていたら、結構しっかり作られていて、見応えのある作品に仕上がっていたのが良かった。やはり織田裕二はうまいなぁと感じる一方、さりげない演技が光る吉田羊にも惹かれた映画でした。