くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「五日物語〜3つの王国と3人の女〜」「フランコフォニア ル

kurawan2016-12-08

「五日物語-3つの王国と3人の女-」
3つの王国の不思議な物語がほとんどオムニバス風に描かれるファンタジーで、その特異な物語が見どころというべき一本でした。特にストーリーテリングの面白さも、映像作りの面白さもこれといってなく、3つの話なのでやたら長く感じてしまう作品でした。監督はマッテオ・ガローネです。

とある王国、子供ができない王妃のために、占い師に聞いたところ、海の怪物の心臓を生娘が料理してそれを食べれば子宝が授かるとつけられる。

そして、その料理をした女と王妃に子供が生まれるが、二人は瓜二つ。そして16年が経つ。この二人のそっくりな王子の数奇な物語が展開。

ここに、小人のような王様が治める国がある。ある日、自分についていたノミをペットのように育て始め、やがて人間くらいの大きさまでなるが死んでしまう。そのノミの皮を残し、その皮の正体を射止めたものに娘を嫁がせると宣言、化け物のような男がそれを言い当て、娘は断崖絶壁に住む男の妻となり連れて行かれる。

声だけを聞いて、その声に惚れて通い続ける王様。実は声の主は老婆であったが、このチャンスを生かそうと、若い娘のふりをして、王の寝床まで行くが、バレて、窓から捨てられる。ところが森の中で出会った怪しい老婆の乳を飲むと若い娘となり、見事、王を射止める。

交互に3つの話が描かれて行くストーリー構成で、それぞれは確かに不思議なお話である。やたら巨大化した化け物が登場して、それを退治したりする伽話の世界ですが、所々に、おざなりに登場するエピソードもなきにしもあらず。故に、終盤に近づくとしんどくなってくる。

物語のクライマックスは、若返った女と王の婚礼に日、見上げると、怪物から王女を救い出した綱渡りの曲芸師が綱を渡っている。それを見上げる瓜二つに生まれた王子、そして若返った女。しかし、見ているうちに、女はみるみる老いていき、その場を飛び出す。カメラはゆっくりと俯瞰で綱渡りの男を捉えてエンディングを迎える。瓜二つの男に変化はないし、怪物から逃げ帰った王女は女王となり即位する。年老いて行く女だけが数奇なラストという感じで、残り二人が普通というのはちょっと、物足りない。

なるほど、ここでようやく、3つの話が一箇所に集まり、全てが元に戻るかのようなニュアンスの映像で終わる様は、めでたしめでたしなのか、これからどうなるのでしょう?か。

ファンタジーとして見れば、確かに面白かったが、映画としては、ちょっと、リズム感に欠ける脚本になっている気もします。まぁ、駄作ではないですし、映像も綺麗で上品なので、見て損のない映画だったとは思います。


フランコフォニア ルーヴルの記憶」
全体的にドキュメンタリーのような映画でした。全編ナレーションで、所々に台詞は入りますが、画面がセピア調だったり、モノクロームだったりと、記録フィルムのような処理がされているので、実在の人物像なのか役者なのか見分けづらい。素直なところ退屈な映画でした。監督はアレクサンドル・ソクーロフです。

ルーヴルの美術品を積んだ船が嵐に会い、パソコンを通じて交信している映像、ナチスがフランスに侵攻してきて、美術品を避難させようとするくだり、ルーヴルの館長のジャック・ジョジャールとナチスメッテルニッヒ伯爵との会話、ナポレオン一世が登場し、自分の絵の前でセリフを語る場面、など、時間と空間が入り乱れる。

どちらかというと、人物ではなく、ルーヴル自身が映画の主人公のごとき作品で、その壮大な建物が築かれる様や、内部の調度品の華麗さなども語られて行く。

第二次大戦は終わり、メッテルニッヒもジャック・ジョジャールもこの世を去って、映画は幕を閉じる。

エンドクレジットの代わりに、海の底に沈んだかのような真っ暗な画面が覆い、FINと出る。うーんしんどかった。