くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「夕暮まで」「ヒトラーの忘れもの」

kurawan2017-01-10

「夕暮まで」
この心境のときのこの映画、完全にはまってしまった。黒木和雄監督作品にしてはちょっと色合いが違う一本で、食事シーンにやたら男女関係を想像させたり、一歩手間で全て終えるSEXシーンの連続が、その焦ったさゆえに余計に男と女の感情が高ぶって見える。吉行淳之介の原作があるとはいえ、ちょっと見応えのある映画でした。

中年の佐々と杉子がドライブをし、いまの関係になったことをつぶやく場面に始まり、バスの中で、佐々が一人の女性杉子と出会う場面から物語が始まる。女遊びに長けた佐々は急ぐわけでもなく巧みに杉子をものにするが、決して最後までさせない。

処女だという杉子、それを特にこだわらない佐々、二人の関係が繰り返され、次第に深くなるようでならない。やがて、家庭を築きなさいと佐々が告げて二人は別れる?いや、杉子は車を降りないから、もしかしたらというラストシーンである。

脚本が満足なものではなく、とりあえず撮影が始まったという作品らしいですが、さすがに見事に処理されていく演出手腕は見事。決してだれない展開できっちり詰めていく。傑作ではないものの並のクオリティではない。個人的には好きな映画かもしれません。


ヒトラーの忘れもの」
これは素晴らしい人間ドラマでした。ナチスが埋めた地雷を少年兵が取り除くという話なので、一見反戦映画、ナチス映画に見えるのですが、それはあくまで題材として使うだけで、本筋は人間としてのあり方、戦争で歪んでしまった人間が本当の生き物だったと思い出す素晴らしい物語でした。監督はマーチン・サントフリートです。

1945年5月、ナチスデンマークから撤退、ドイツの捕虜兵が撤退していく場面に映画が始まる。通りかかったデンマークの軍曹は必要以上に兵士にいちゃもんをつけ殴る蹴るをする。

この軍曹はナチスが海岸に埋めた膨大な地雷の除去を命令されるが、送り込まれたのはドイツの少年兵だった。

最初は強硬に少年兵を使うものの、一人また一人と爆発で被害に遭い、食料も配給が滞ってくると、いつの間にか人間性に目覚め始める。そして食料を調達し、たまに休日を設けたりを始める。しかし、極度の緊張にミスが繰り返され始め、神経過敏になる少年兵達。

ある日、軍曹の飼い犬が地雷で吹き飛び、除去が済んだと思われていた場所に不安が残り、軍曹は改めて厳しくなる。さらに近所にいた農夫の少女が地雷地に踏み込んだことがきっかけで、少年兵の一人は少女を助けた後自ら地雷に飛び込む。

しかし、ようやく撤去が完了、トラックに撤去した地雷を積んでいる時、安心からか、ぞんざいに扱ったため爆発、とうとう十四人いた少年兵は四人になってしまう。しかし一旦ドイツに送り返す手続きにはいったはずが、上層部はさらに別の場所に派遣しようとする。

赴任地が変わる軍曹だが、その仕打ちに耐えきれず、四人を勝手に連れ出しドイツに逃がしてやってエンディング。このラストがせめてもの救いでした。

細かいエピソードがきっちりと最後まで生きてくる緻密な脚本がうまいし、様々なエピソードの配置の配分も見事でストーリー全体のリズムが見事に仕上がっている。

軍曹が次第に変わっていく様の演出もうまいし演技も見事なので、どんどん画面に引き込まれてしまいました。いい映画でした。