「ザ・レイプ」
落合恵子の原作を東陽一が監督した話題作で、一人の男にレイプされた主人公の心の変化から自立、さらに周囲の男たちのが姿を描いて行く。作品的にはさすがに時代色がないとは言えませんが、冒頭の飛行機の模型のシーンから始まるストーリー演出の面白さはさすがに東陽一の才能を感じます。何と言っても当時若手女優として全盛期だった田中裕子のが裸体が美しすぎるほどに妖艶で、見ごたえ抜群。
恋人とのベッドでのひと時の場面から映画が始まる。ある会社の帰り道、主人公は、かつておとづれた中古車店の男にレイプされる。
主人公は恐怖もあって警察に連絡、裁判となる。こうして物語の本編が展開。裁判することで赤裸々になる事件の姿と、情け容赦なく追い詰める弁護士の姿が、ドキュメンタリーのごとき演出で描かれる。
やがて結審し、有罪が決まったかのラストで、しっかり地に足をつけて歩き始める主人公の姿でエンディング。
凛とした田中裕子の最後のシャワーシーンが立派と言える一本。この映画を見ると男はいかにも小さな存在だなと思ってしまいます。いい映画でした。
「化身」
渡辺淳一原作を東陽一監督作品です。
映画としてはそれほど卓越したものではないですが、不思議なくらいにひきこまれてしまいました。
全く、東陽一監督作品の男というのは誰も彼も不甲斐ないですね。結局女が人生を仕切って行くという感じです。
作家で大学教授の主人公の男は、飲み屋で知り合った一人の女性黒木瞳を女として育て上げて行く。アンティークの店を持たす為に金を与え、やがてどんどん女は変化して行く。この様が実にうまい。
ところが、女として成長していった女はやがて男から離れて行くという展開となる。
夜の街でたたずむ男のショットでエンディングなのですが、なんとも言えない哀愁が漂い、結局男はそういう存在なのだと納得してしまうラストである。
不思議なくらいに楽しんでしまったのは、やはり若き日の黒木瞳が驚くほど可愛らしいからだろうか。つまり、結局、男なんてそんなものなのである。
セカンド・ラブ」
懐かしい大原麗子主演のちょっと大人のラブストーリー。よくある波乱の展開から、さらっと綺麗に収束するストーリー構成の面白さは楽しかった。監督は東陽一。
結婚二年目の夫婦、妻はグリーンコーディネーターとしてちゃきちゃき仕事をこなし、夫は木造建築に憧憬を抱く建築設計士。
ある日、妻が帰ると、台所に死体があったことから、どこか夫婦の間にギクシャクしたものが忍び込んでくる。夫に女の影、妻にも男の影。いまにも破綻しそうな夫婦の関係が、洒落た映像で描かれる様がとっても魅力的。
やがて妻は妊娠がわかり、夫の女も魔性の女ながらそれなりに 身を引き、死体事件の真相も何気なく解決して、夫婦は元の鞘に収まって行く。
ドロドロしそうでならない微妙な大人のドラマがとっても爽快な一本で、見終わった後の好感度がいい作品でした。