くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ドクター・ストレンジ」「キセキ あの日のソビト」「恋妻

kurawan2017-02-08

ドクター・ストレンジ
マーベルコミックの新シリーズ。空間を自由に操るCG映像の面白さと、時間を操るという設定、天地左右関係なく描かれる空間演出が面白い一本。と言っても、設定が魔術になったこと、つまり精神世界を扱う話になっているレベルで、中身はほとんどアベンジャーズシリーズという感じである。まぁ、芸がないといえばそういうことかもしれません。監督はスコット・デリクソンです。

傲慢ながら天才外科医のスティーブンは、ある日車の事故で瀕死の重傷を負う。目がさめると彼の両手の神経はダメになっていて、外科医としての命を絶たれる。しかし諦めきれない彼は、様々な実験的な治療をするも功を得ず、ついにカトマンズの東洋魔術の助けを借りようと出かける。

そこで彼は半信半疑ながら、魔術的な奇跡を目の当たりにし、自らも修行を始め、次第に新たな力を身につけて行くが、そんな中、魔術世界の陰謀の中に放り込まれて行くという物語である。

街がモザイクのように崩れたり再構築したり、天地左右が入れ替わったり、空中に浮遊する登場人物たちが戦ったり、時空を超えたりとCG演出の限りを尽くした戦いのシーンがとにかく面白い。さらに、それらを作るにあたっての美術的な造形デザインもなかなか見応えもあるし美しいので、独特の世界観を楽しむことができます。

物語は単調でありきたりですが、ゲーム感覚の映像世界という今時の感性が見え隠れする面白さは堪能できました。楽しかったです。


「キセキ あの日のソビト」
GReeeeNのヒット曲「キセキ」の誕生秘話を扱った作品で、丁寧な脚本で真面目に作られているし、主役の菅田将暉松坂桃李がうまいので、画面が引き締まったという感じの映画でした。ただ、脚本がラストの目的に向かってしっかり書かれていないので、前半がグダグダになっているのは残念。監督は兼重淳です。

医者で厳格な父親を持つジンとヒデの兄弟、兄はミュージシャンを目指しアマチュアバンドで日々暮らしていて、事あるごとに父と喧嘩をする。一方の弟のヒデは医学部を目指し勉強をしているもなかなか受からず、とうとう歯科医を目指すことにする。

ある日兄のグループに音楽プロデューサーから声がかかり、活動を始めかけるが、どこかプロデューサー通りも合わず挫折。そんなおり、大学に受かったヒデは仲間と音楽を始め、その作った曲を聴いたジンはその曲をプロデューサーに持ち込む。

売れると判断したプロデューサーはヒデらの曲をCDにし、次々とヒットして行く。

まぁ、半分実話なので、淡々と進むといえばそうだし、脇のエピソードで配置された心臓病の少女の話もよくあるというものであるが、全体に、丁寧に書かれているために、妙な嫌味やダレがないのは良かった。

映画としては普通の出来栄えながら、と言って見て損だったというものでもなかった気がします。


「恋妻家宮本」
これはちょっとした佳作でした。いや、とにかく良かった。絶妙の間合いで展開する物語のテンポが抜群だし、エピソードの配置のバランスも最後の畳み掛けも見事。しかも全員に歌わせるあたりも絶妙のエンディングでした。監督は遊川和彦。今までなんで演出しないのかと思っていた脚本家である。

熟年を迎えた中学教師の陽平と美代子の夫婦。長男の正も無事結婚し、二人だけの生活になったが、ある日、陽平は本の間から美代子が署名した離婚届を発見する。そして、日々悶々とし始めるというのがストーリーの根幹だが、その周囲に、陽平の教え子の男子の母親の不倫事故の話や、陽平が通う料理教室での奥様や結婚間近の女性のエピソードなどを絡ませ、しかそれぞれがラストシーンに結びつくように組まれているあたりはさすがです。

オープニング、ファミレスで店員が迎える異世界のようなファーストシーン、さらに事あるごとに登場する愛想の良い店員、
テクニカルな映像テクニックでリズムよく運ぶコミカルなシーン。さらにカメラ表現の面白さもうまいし、どこを取ってもそれなりにそつなく楽しめる。

ラストはそれぞれがそれぞれにハッピーに結末を迎え、全員がファミレスでなんらかの存在として登場し、全員が歌い出してエンディングを迎える。まさしく映画である。

ただ、どこか不思議と物足りなさを感じられるのは、やはり原作があるゆえでしょうか。と言っても久しぶりに映画らしい映画で楽しんだ気分です。オススメの一本ですね。