くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「絵の中のぼくの村」「ボクの、おじさん」

kurawan2017-02-09

絵の中のぼくの村
キラキラと弾けるほどに素朴でファンタジックなおとぎ話のような世界に引き込まれてしまう一本。映画なのにまるで絵本を開いていくような不思議な感覚と懐かしいノスタルジーであるはずなのに、まるで現実世界と違う異世界の不思議さを併せ持ったとっても素敵な映画でした。監督は東陽一
絵本作家の田島征三と双子の征彦の現代の姿から映画が始まり、物語は彼らの子供時代、戦後間も無くの頃を舞台に、山深い田舎で暮らす彼らの物語が描かれていく。

川で魚を取り、近所の畑などを悪戯したり、学校でやたら先生に叱られたり、今ではありえないようなエピソードも散りばめられ、それがかえって、余計に不思議なエッセイのような色合いと叙情的な詩篇のごとき空気で描かれていきます。

森の精のような3人の老婆や差別されているかのような少年の登場、暗闇に宿るお化け、何もかも彼らの周りに息づくのは、まるで昔話から抜け出たような、それでいて微妙な時代色を見せる不可思議な様々なもの。これという大きな物語があるわけではないのですが、研ぎ澄まされたような素朴感がたまらなくキラキラしているのです。

感覚でこの映像を感じとった時、いつか自分がこんなにも世界の中にいたことを思い出す。そんなファンタジー作品でした。良かったなぁ。


「ボクの、おじさん」
都会での生活にやや苛立ちを持つ浩二、遊び半分のような銀行強盗をしてしまう甥の拓也。この二人の心の交流を通じて、それぞれの生き方を見つめ直し、未来へゆっくりと歩みだしていく姿を描いた青春ドラマ。所々に不思議な仮面を被った妖怪のような存在を登場させたり、過去と現在をトリック撮影でフラッシュバックさせたりと、ファンタジックな映像表現を駆使したちょっと面白い映画でした。監督は東陽一

会社ではクライアントにボロクソに叩かれながらその日を生きている浩二。一方、大人の入り口に立ってわけもわからない戸惑いを抱き始める拓也。そんな二人は、最初はどことなく溝があるが、すぐにお互いに接近していく。

一見、大人の浩二が実はやんちゃな側面を拓也に見せ、次第に親密感を作り出していく展開がとってもいい。

特に派手な事件も起こるわけではないけれど、不思議なノスタルジーに浸れる魅力的な映画で、主演の二人の立ち位置が、微妙に近づかず離れない存在が心地いいし、拓也の父親の存在や、田舎の風景、川での遊泳の使い方など、とにかくうまい。

センスのある監督が作るとこういう物語も素敵な一本になるという典型的な作品でした。