くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「わたしのグランパ」「王様のためのホログラム」「マリアン

kurawan2017-02-14

「わたしのグランパ」
石原さとみのデビュー作。彼女のみずみずしさもなかなかですが、圧倒的な菅原文太の存在感で映画がぐいっと締まった感じの秀作でした。本当に良かった。いい映画を見たなという感想です。監督は東陽一、原作はなんと筒井康隆です。

13年の刑期を終えて、五代謙三が戻って来るところから映画が始まります。自分の親友がヤクザに殺され、一人で殴り込んでヤクザを殺してしまった罪による刑期だった。孫の珠子はそんな祖父にちょっと興味津々。祖母は会うのも面倒だからと名古屋に一人旅立つ。

珠子の学校は、当時の中学よろしく、いじめや学校暴力が行われ、その描写もさりげなく挿入。そんなところへ帰ってきて、次々と問題をさらりといなして行く謙三の存在感が前半の味。やがて、そんな一人の男の過去が少しづつ周囲の人たちの心に火を灯して、ゆっくりと暖かい人間ドラマに変換して行く後半がとっても素敵。

実は屋根裏に、ヤクザから奪った大金があり、それを珠子に密かに教える。一方で地元ヤクザが珠子を拉致して、謙三に勝負を挑んで来るが、ここも巧みにさらっとかわして、無事珠子は謙三のところへ戻る。この終盤の出来事も、妙に仰々しく描かないあっさり感が実にうまい。

一段落したかと思ったところ、溺れかけた女の子を助けようと川に飛び込んだ謙三はあっさり死んでしまう。作劇のうまさとはこういうのをいう。ラストの処理が実にまい。

祖父が溺れた川に佇む珠子のシーンでエンディングだが、オープニングがこのシーンからだったことを思い出し、胸が熱くなります。

少しづつ廃れてしまった人と人の暖かい心の交流、それが、ラストの焼香をする場面で、ここまで謙三に関わった人たちが訪れることで一気に表現した様は見事です。本当にいい映画、考えさせられる一本に出会いました。


「王様のためのホログラム」
トム・ティクヴァ監督らしい切り口で展開する物語の奇想天外さが面白い。普通に物語が続いているのに、どいこか突飛な世界観。まるでいつも天地が逆さまじゃないかと思えるような流れが独特の映像表現とコラボして楽しめる映画になっていました。

エリートサラリーマンだった主人公アラン。ピンクの煙でボンボンと次々と彼の周りのものが消えて行くオープニングにまず引き込まれる。そして彼はIT企業へ就職し、サウジアラビアへホログラムを売り込みに行くことに。

現地に着いたものの、案内されたのはテントの事務所、WIFIもない環境。さらに食事が出る気配もない。こうして物語の本編が始まる。

行くたびに不在の国王、よくわからないが親しくなるタクシー運転手、背中の腫瘍を取り除く手術さえ現地で受けることに。あれよあれよと転がる物語の背後に、何気なくアラブ諸国の制約や宗教観が見え隠れし、非現実な一瞬が垣間見られるからまたいい。

結局、プレゼンは成功したものの、受注は中国に持っていかれ、それでも、さらに前向きに踏み出したアランの姿の描写でエンディング。個性的、そんな一言が思い起こして見て感じられる映画でした。


「マリアンヌ」
なかなか手応えのある作品、ラストまで微動だにしないしっかりと描きこまれた物語を堪能できる映画でした。監督はロバート・ゼメギス。

フランス領モロッコに一人の兵士マックスがパラシュートで降下するところから映画が始まる。現地で工作員のマリアンヌと合流し、ドイツの大使を殺害する任務に降り立ったのである。時は第二次大戦下。

作戦遂行に恋愛関係は禁止とお互いプロフェッショナルとして行動するが、やはり惹かれるものもあり、体を合わせる。

やがて、作戦終了とともに結婚、女の子も生まれるが、そんな時、マリアンヌにドイツのスパイではという嫌疑がかかり、確認のための作戦がマックスに託される。マックスは、禁じられているにもかかわらず、独自に調査、その確認のために、本物のマリアンヌなら弾けるピアノを妻に要求。

しかし、疑惑は事実だった。追っ手がやって来る前に子供を連れ逃げるべく飛行場に向かうが、エンジンをかけるのに手間取っている間に追いつかれる。マリアンヌは身を決して自殺、マックスが射殺した風に上官も配慮し物語はエンディングとなる。

下手に演出したり演じたら、全くの凡作になるところを、さすがにロバート・ゼメギスの演出力とマリオン・コテイヤールの名演技で引き立たせた感じです。それにスティーブン・ナイトの脚本も見事で、前半のサスペンスフルな物語から後半のドラマ部分への配分が実にうまい。見応えのあるいい映画だったと思う。