くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「無限の住人」

kurawan2017-05-06

無限の住人
いやあ面白かった。物語の組み立てが実によくできていて、冒頭の百人斬りのシーンからクライマックスまで全然飽きない。殆どが殺陣の斬り合いのシーンにもかかわらず、それぞれがリズム感にあふれていて、しかも、登場人物が生き生きとしているので、薄っぺらなアクション映画に終わっていないのがとにかく良い。監督は三池崇史、さすがに彼の真骨頂を見せた感じの時代劇の傑作でした。

映画はモノクロームから始まる。人斬りの万次が役人を切り捨てるが、その中に妹の夫がいたことを知る。その原因で妹の町は気が触れてしまい、万次は妹と一緒に追っ手を逃れることに。ある日、賞金稼ぎに妹を殺され、切れた万次は賞金稼ぎの一団を滅多斬りにする。冒頭の見せ場百人斬りのシーンである。そして、瀕死の万次に近寄ってきたのが謎の老婆八百比丘尼。その老婆は万次にラマ僧から手に入れたと言う不死の虫を飲ませ、万次の命を助ける。そして50年が経つ。

こうして物語が本編にはいるが、冒頭の殺陣シーンが実にダイナミックで面白い。正当な斬り合いになっているが、細かいカットとダイナミックなカメラワークで飽きずに見せてくれる。

ここに逸刀流の名を名乗る剣客集団に両親を殺された浅野凛という少女が現れる。逸刀流の党首天津影久を倒すために用心棒を雇うことにした凛は町で万次と出会う。こうして凛と万次の物語になるが、凛が町に瓜二つという点から、生きたいという思いに囚われて行く万次の心の変化が非常にゆっくりと芽生えてくる演出が素晴らしいし、それを演じた木村拓哉もみごと。

幕府に登用されるという言葉に乗せられてしまった影久が、その裏切りを知り、一方で仲間を万次に次々と殺され、一人になったところへ、幕府からの大集団の侍に囲まれるクライマックスから、万次や凛も加わり、さらに幕府に金で雇われた刺客たちも加わる大立ち回りとなる終盤は圧巻。

十三人の刺客」で同様の集団殺陣シーンを扱ったとはいえ、今回はテンポが半端なく見事で、終盤の何百人という立ち回りから、影久との一騎打ち、凛の仇討ち成就、そして虫の威力が薄れ瀕死の傷を負った万次が死んだと思わせて目を覚ますエンディングが見事に映画になっている。

大友啓史の描く「るろうに剣心」の殺陣とは違うオーソドックスな演出ながら、全体のストーリーの組み立て、エピソードの配分のうまさの完成度は素晴らしかった。難を言うと、金で雇われた刺客の存在感が今ひとつ作り込みが足りなかった気がするが、もしかしたら、予定した尺を削るためにカットした感がないわけでもない。ただ、その欠点を無視しても他の部分は実によくできている見事な娯楽映画でした。