「パーソナル・ショッパー」
なんの前知識もなく見にいったので、最初のシーンでまず先入観が吹っ飛んでしまった。パーソナル・ショッパーというのは多忙を極めるセレブの代わりに服やアクセサリーを買う職業それだけを知っていたので、余計混乱、これってホラーサスペンスやんということなのです。監督は巨匠オリヴィエ・アサイヤス。
主人公モウリーンが一軒の家にやってくる。薄暗く、誰もいない風だが、何かを感じたかの空気のあとフェードアウトして一人の女性がやってくる。部屋に眠るモウリーンの姿。どうやらモウリーンは霊媒師らしく、霊を感じ取る力があるという。この説明から一気に予想していた物語じゃないと気がつくのですが、あとはどちらかというと心理ドラマの様相を帯びてくる。
心臓に欠陥があり双子の兄を先日心臓発作で無くしたというシーンがかぶったりし彼女の姿が見えてくる。
わがまま放題のセレブ、キーラの服を買っていったり、仕事の一面がある一方で
霊媒師として見えてくる何かに怯える彼女も描かれ、一体どちらの話なのかと次第に混乱してくる。
やがて不審なメールが届き始め、それに答える傍で女としての様々な欲望が表に出てくるという展開もある。
メールに応えながら、メールの指示のままに様々な部屋に出入するが、そこに誰もいなかったり、キーラが殺される事件まで起こる。そして、最後に、支持された家に行き、そこで霊と会話し、全ては気のせいだと回答されてエンディングなのだが、どうも不完全燃焼なくらいにわかりづらい映画である。
メールのやり取りの部分や一人セリフの部分のフィックスなカメラが映像として動かないというストレスも蓄積する画面作りになっていて、確かに緊迫感は生み出されるが、次第に疲れに変わってくる。もちろん、並の出来栄えではないけれど、何か欲張りすぎたサスペンスという感じの作品でした。
「サクラダリセット 後篇」
良かった!黒島結菜目当てで見にいった前篇がものすごく面白くて、後篇が楽しみだった映画を見る。確かに荒はたくさんあるし、映画としての作品の出来栄えはもう一歩かもしれないけれど、めちゃくちゃ感動してしまいました。ラストの春埼美空の微妙な心の動きを示すセリフと受けるケイの仕草の微妙さが最高。監督は深川栄洋。
物語はサクラダの町の能力者の能力を全て無くしてしまおうとする管理局の計画に対抗するケイたちの物語が中心だが、その伏線としての相麻の生き返りという前篇のラストからの続きの話になる。
全てがケイの計画だったという終盤の畳み掛けが実にうまい脚本なのだが、そのあとは若干間延びするし、前半のサスペンスな流れは前篇の方が予期できていたと思う。おそらく原作がまだシリーズとして続いているからだろう。
深川栄洋監督得意の淡い光を多用した美しい画面作りも美しいし、黒島結菜の何気なく抑えた乙女心の演技も抜群。
相麻と春埼、ケイの三角関係をさりげないセリフで見せるラストの「セイブ」のセリフが最高。これだけで胸が熱くなってしまいました。決して映画として傑作ではないと思うけど、見た人の誰かになんらかの感動を残す映画であることは確かです。と、私は思います。