くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブラッド・ファーザー」「武曲 MUKOKU」

kurawan2017-06-06

ブラッド・ファーザー
できの悪い娘を助けるために、元アウトローの父親が、かつてのサバイバル術を駆使して奮闘し、最後は殺されるものの、娘を助けるというそれだけの映画。こんな新おプルな映画はそれはそれで良いやという一本でした。監督はジャン=フランソワ・リシェです。

何やら仲間同士の諍いか、ある家に襲いかかる女と若者たち。物の弾みに娘が彼氏らしい男を撃ってしまい、そのまま逃げる。娘の父親はかつてのアウトローで、今は仮釈放の身で、父に娘が助けを求める。父親はジョンを演じるのがメル・ギブソン。これだけが売りの作品。

後は、ひたすら逃亡とバトル戦の映画でなんの中身もなく、最後は、娘が殺したと思っていた若者も生きていたのだが、結局銃撃戦になって、父親はなんとか娘を逃して死んでしまう。

それだけというのもわかりやすい一本。


「武曲 MUKOKU」
非常に真面目に一生懸命に作ったという感じの映画で、見ていて息苦しいほどに力作感が溢れてくる作品でした。絵作りも徹底して美しいし、役者への演出も徹底されているし、物語の語りも生真面目に展開する。クオリティは高いが、ここまで作りこまれると疲れますね。監督は熊切和嘉です。

主人公矢田部の子供時代、剣道の達人の父親に庭で稽古をつけてもらっているシーンから映画が始まる。舞い散る花びら、オーソドックスな構図、厳しい父親の罵声。そして、矢田部が学生になり、父親との木刀での対決で父を殴り殺してしまう場面、そして物語は現代へ。

ここにラップのボーカルをする一人の少年羽田のシーンがかぶる。ふとしたことで剣道部の部員と喧嘩になるが、竹刀で相手を倒してしまう。その姿に才能を見た師範の雪峯は羽田に剣道を教える。一方、矢田部は父を植物状態にしてから、酒浸りの毎日を送っていた。

雪峯は羽田を矢田部に向かわせることで、矢田部を救い、さらに羽田も育てようとする。物語はこの二人のぶつかり合いが中心になるが、構図の取り方や、景色のカットなど、徹底的な様式美を取り入れた画面作りがとにかく美しい。しかも、クライマックスで、雨の中、矢田部と羽田が喧嘩まがいに打ち合いをするシーンは雨に墨を混ぜて「七人の侍」の如し演出を見せる。

結局、終盤、酔って相手の喉を突いた矢田部は羽田の怪我を見て、狂った上に次第に自分を取り戻す。一方植物状態の父も亡くなり、魂も解放されて、二人は道場で真摯に向き合って試合を始めるカットでエンディング。

それぞれの若者がそれぞれに立ち直る物語ということなのだが、なんとも重いのである。隙がないのである。ここまで作りこむのもどうかと思うほどに生真面目な作品である。しかし、良い映画であることは確かです。見応え十分な一本、そんな映画でした。