くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ヒトラーへの285枚の葉書」「メアリと魔女の花」

kurawan2017-07-12

ヒトラーへの285枚の葉書
映画として非常によくできた人間ドラマの秀作でした。一体ナチスの映画はとどまるところを知らないのかと言えるほど次々と描かれてくるのですが、この作品はナチスへの批判というより、単に戦争への批判というより作品ではなかったかと思います。監督はヴァンサン・ぺレーズです。

一人の若い兵士ハンスが森を逃げている。間も無く銃声が聞こえ彼は死んでしまう。カットが変わると、郵便配達が一通の手紙を届けにくる。ハンスの死を両親に届けにきたのだ。受け取ったのはアンナと木工工場で働くオットー。

息子の死に打ちひしがれる夫婦だったが、ある日、オットーは一枚のポストカードに、「息子はヒトラーに殺されたのだ」と書き込み、そっと街に置いてくる。それを見た妻アンナもまた夫とともに、批判的な内容のカードを町中に置き始める。

一方、最初は気に留めていなかった警察側も、次第にその件数の多さに動き始める。さらに親衛隊からの圧力もかかり始め、いかにも真犯人ではない男を逮捕してしまう。明らかに犯人ではないからと釈放した警部は親衛隊の大佐から罵倒され、とうとう、釈放した男を銃殺してしまう。

次第にベルリンの街が恐怖政治に染まっていく様子がこの警部と親衛隊とのやりとりに描かれていく。

一方でオットーらの住むアパートのユダヤ人老婦人が近所のドイツ人に家を荒らされ、とうとう老婦人は自殺してしまう。じわじわとあらゆる行動が統制されていく中、カードの枚数はどんどん増えていく。

そしてある日、たまたま臨時で勤務に入ったオットーは、工場内で持っていたカードを落としてしまう。そして、それを見つけた工員に届けるように指示し、ついに彼は逮捕、妻のアンナも逮捕される。

オットーはすでに覚悟をし、警部も彼の様子に、若干同様さえも覚える。

そして、オットーもアンナも処刑され、証拠品のカードは警部が読み直し、窓から外にばらまいたのちに自殺する。

次第に何かの矛盾を感じ始める警部の心の変化が実にうまいし、主となるオットー夫婦の行動のスリリングさと相まって、非常に奥の深いストーリー展開となって心に迫ってくる。ものすごい傑作とまでは行かないまでも、相当によく完成された人間ドラマとして見応えのある一本でした。


メアリと魔女の花
原作があるとはいえ、まず絵がちょっとオリジナリティに欠けすぎていて夢がないのと、ストーリーの展開が映画の長さの割にうまく配分されていないのか長く感じる。しかしながら見終わってからの楽しかった感はやはりジブリの後継のイメージが満載で面白かったです。監督は米林宏昌です。

魔女の住む宮殿でしょうか、一人の魔女が追っ手を逃れて逃げるスペクタクルなシーンから幕を開ける。なんとか脱出したものの追っ手に攻撃され森の中に落ちていく。その時に花の種を落としてしまい、それが大きく開いて森を包んで行って物語は現代へ。

森の中に越してきた11歳のメアリは、何をするにもドジばかりで、しかも周りに誰もいない街で退屈な毎日だった。たまたま近所のピーターという少年が唯一の友達?

ある日、一匹の猫を追いかけているうちに森の中に入り、そこで夜間飛行という美しい花を手に入れる。なんとそれは、冒頭で魔女が落とした花が咲いたものだった。

霧の深い日、森に猫を追いかけて入ったメアリは夜間飛行の実を手にした途端、箒が空を飛び魔女に変わってしまう。そして由緒ある魔法大学に間違って着いてしまうのである。そこでは、変身魔法を成功させて大きな力を得ようとする校長と博士がいた。

なんとか逃げ出したメアリだが、メアリを心配して森に入った同じ村の少年ピーターが校長たちに捕まり、実験台にされようとしているのを知り、もう一度魔女になることにする。

こうして、一夜限りの魔女メアリと魔法世界の冒険物語が展開。ジブリ譲りの壮大な飛行シーンをクライマックスに、不思議ワールドが展開するのだが、今ひとつ美術造形がありきたりでファンタジー性が弱い上に、周辺のキャラクターが今ひとつ光ってこないので、どうも素直に夢の世界にのめり込めないのが残念。

結局、何もかもが元どおりになるハッピーエンドですが、今度の米林宏昌作品は今ひとつだった気がします。