くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パワーレンジャー」「歓びのトスカーナ」

kurawan2017-07-19

パワーレンジャー
ご存知、日本の戦隊ヒーローの外国版である。例によってCGのみを見せ場にするだけの作品で、ストーリーの組み立ても、ヒーロー描写の面白さも見せるわけもない普通の物語が展開、正直、クライマックスになるあたりでは眠くなってしまった。主人公五人がヒーローになる下りの背景の描き方が適当で作り込みが足りないせいかもしれない。監督はディーン・イズラライト。

はるか6500万年前、地球の危機に立ち向かっている五人の戦士の姿が描かれ、よくわからないままになんとか持ちこたえたようで、悪の化身は封印され物語は現代へ。

いかにも落ちこぼれや訳ありの若者五人が、偶然渓谷でパワーストーンのようなものを手に入れ、突然驚異的な力を身につける。

再度渓谷を訪れた彼らはゾードンというかつての戦士とロボットのアルファ5から、悪の戦士リタが地球を狙っているから立ち向かうようにと教えられる。

ところが五人が一人前になるためには変身できるようにならなければいけないが、何やら友達思いの正義に目覚めないと変身できないらしく、その辺りの目覚めるまでが実にまどろこしいし、よくわからない。

とは言ってられないので、リタを倒すために五人がふとしたことで変身できるようになり、敢然と立ち向かっていく。あとはCGバトル戦で、今時なんの変哲も無い戦闘シーンの連続。しかも結構あっさりと終わってしまうのだからまた残念。

おきまりの巨大ロボットのような姿になった戦士たちが、リタが操る巨大ゴールダーと戦う。ダイナミックなカメラワークもない実にしょぼいバトル戦で、結局吹っ飛ばされたリタのカットから、元の姿になって、また次の時に集まろうと私生活に戻る五人の姿でエンディング。まぁ、こんなものだろうと思った通りの映画だった。


歓びのトスカーナ
いい映画なのですが、あともう一歩傑作に届かないのが実に勿体無い。物語の展開やエピソードの組み立てなど、全然退屈せずに一気に見せていくのですが、わずかにしつこさが見え隠れするのと、ふっと核心から外れる瞬間が見える。でもラストはとっても映画的になっていてよかった。監督はパオロ・ヴィルズィです。

赤ん坊をバギーに乗せた一人の女性が橋の上を歩いていて立ち止まる。カットが変わると、とある司法精神病施設。やたら喋り捲っている女性ベアトリーチェ。彼女は自称伯爵夫人だが、時に様々な人物になったり有名人と知り合いであると公言している。どこかおかしいと誰もが気がつく。

ある日、身体中にタトゥを入れたドナテッラがやってくる。初対面の時からやたら話しかけてくるベアトリーチェに五人が辟易としながらも、どこか鬱表情のドナテッラも唯一の友人のごとく親しくなって行動を共にするようになる。

農園のアルバイトを勧められ、いくようになった二人が、ある時、迎えの車の手配のミスで、取り残されてしまう。そしてベアトリーチェはドナテッラの制止を聞かずに走って来たバスに乗り逃げ出すのである。こうして二人のありえそうであり得ないような逃避行が始まる

いく先々で機関銃のようにまくし立ててその場を切り抜けていくベアトリーチェ。一方、ドナテッラには、かつて別れた息子に会いたいという思いが募ってくる。

一方逃げ出した二人を施設の従業員が探し始める。このメンバーの中に親身に二人のことを考える女性や施設長がいるが。どうもこの二人の描写が適当なので映画が膨らまないのは残念である。

ベアトリーチェは元夫のもとに行ってみたり、ただ思いを寄せるだけの若者の家に行き罵倒されたりしながら逃避行するが、ドナテッラは精神病院に連れ戻され入院させられてしまう。しかし、ベアトリーチェは、元夫の家からお金などを手に入れ、ドナテッラの息子をネットで探し、なんとか会わすように段取りをして、ドナテッラを助け出し、いまは養親の元で暮らす子供の家に連れていく。

子供が生後8ヶ月の時、ドナテッラは、彼女を妊娠させた妻子ある男に素っ気なくされ、子供共々橋から飛び降りたのだ。幸い二人とも助かったが、ドナテッラは精神病施設に送られ、子供は他人の養子となった。
しかし、養親の家では合わせてもらえず、少年になった息子に生垣から顔を合わすだけだった。

夜の街に出た二人は、休んでいるところを施設の人々に見つかり、ベアトリーチェは連れ戻されるが、ドナテッラは逃げる途中バイクに跳ね飛ばされる。しかし、彼女は怪我を負ったまま放浪し浜辺で一夜を明かす。目がさめるとなんとそこに遊びに来ていた息子と出会い、海で少し戯れたあと、素性を話さずドナテッラは去っていく。そして一人施設に戻って来た彼女を窓からベアトリーチェが迎えていた。

要するにドナテッラの物語が核なのであるが、ベアトリーチェのまくし立てるセリフの連続がひたすら物語を牽引するので、ふとすると彼女に視点が写ってしまう。精神的に不安定でチグハグな二人が何気無い逃避行の後、神様のいたずらのようなラストシーンへ流れるストーリー展開はなかなかのものである。

もう一歩、何かが足りない気がするのですが、評価してしかるべき映画だったと思います。