「君の膵臓をたべたい」
いやぁ、思ってた以上にいい映画でした。泣かされたのもありますが、なんか生きる勇気を与えてくれたような気がします。とにかく、原作がいいのでしょうが、主演をした浜辺美波が抜群に素晴らしく、映画を最初から最後まで引っ張って行く。あまりに際立ったスターを入れなかったことが成功だったかもしれません。監督は月川翔です。
ある高校、図書館が閉鎖解体の下りになった旨を説明しているシーンから映画が始まる。そして一人の教師に本の整理が託される。彼はかつて、図書館の本を一人で整理したことがあった。図書室に入って、本を見ていると、過去が思い出されてきて物語はフラッシュバックされ、先生が学生時代だった物語が始まる。
人と関わることを嫌い、いつも一人で本を読んで過ごしている僕は盲腸で入院し、そのロビーで一冊の本を拾う。それは共病文庫と書かれていて、自分は膵臓の病気で間も無く死ぬと書かれていた。しかも取りに来たのはクラスでも人気の山内桜良だった。
こうして秘密を知った僕と桜良の物語が始まる。この桜良を演じた浜辺美波が抜群に愛くるしくて屈託のない笑顔が抜群に可愛いのです。そして、彼女に翻弄されながらも行動を共にし始める僕。何気ないはずの話が、いつの間にか引き込まれ、何気ないセリフの繰り返しが、どんどん切なさの一方で生きる不思議を感じさせてくれる。
桜良は自分が死ぬまでにやりたいことをリストにして次々と実行するが、ある日検査入院で学校を休む、さらに、予定していた以上に入院しなければならなくなり、落ち込むが決して僕にはその姿を見せない。そして退院。桜良が行きたがっていた桜を見に行くために、僕は彼女と待ち合わせるがいつまでたっても来ない。仕方なく夜の道を帰る僕にニュースが聞こえて来る。通り魔によって一人の女子高生が刺されて死んだと。その被害者こそが桜良だった。あっと言う展開だが、この締めくくりが命の大切さ、生きることの大切さを一気に伝えて来るのです。
一方そのことで落ち込んだ僕はようやく桜良の自宅にいき、共病文庫を手にして号泣する。現代では桜良の親友の恭子がこれから結婚式という。僕は最後に整理がほぼ終わった図書室に行くと、そこに奇妙な貸し出しカードを見つける。そこにはかつて桜良が僕に貸してくれた「星の王子さま」の本に書かれていた落書きがあった。その本にはずっと病気のことを隠して来た恭子への桜良からの手紙が入っていた。
結婚式に駆けつけ、僕は花嫁となる恭子に桜良からの手紙を渡す。恭子の夫となる人は僕が学生時代だった、やたらガムをくれたクラスメートだったり、散りばめられる人間関係もしっかりしているし、無駄なく原作の味を映像に仕上げた点では本当によく仕上がっていたと思います。
強いて言えば、北川景子だけミスキャストだったか。彼女ももう少し存在感の薄い女優を入れたらスッキリ仕上がった気がするけど、まぁこれも商売なので仕方ないですね。
でも本当にいい映画でした。
「嵐を突っ切るジェット機」
小林旭主演のたわいのないアクション映画。物語もこれと言って面白くもなんともない。というより、よくわからない。ただ、自衛隊のアクロバット飛行チームが物語の中心なので、やたらジェット機が飛び回るシーンが当時としては珍しかったろうし、それが売りという感じです。監督は蔵原惟繕。
アクロバットチームに属する主人公だが、訓練中に事故があり解散になってしまう。主人公の兄は私設の飛行隊を率いて、飛行場を経営しているが、その運営が厳しく、何やら良くない人たちと付き合いがあるようで、その絡みで目をつけられている。そんな兄を戒めようと奔走する主人公だが、何やら、その悪者が飛行場で兄貴に無理やり書類を書かせるだの、匿えと迫るだので、最後は逃避行するのをジェット機で主人公が追いかける。
結局、兄は死んでしまい、アクロバットチームは再出発することになるが、主人公は戻る気もなく、最後にジェット機に乗っている姿を見せて映画が終わる。
なんだったのか?こういう作品を量産するようになって映画は斜陽化して行くのだろうというのが見え見えの一本だった
「狂熱の季節」
これは素晴らしい傑作でした。日本映画と思えないほどのダイナミックなカメラワークとジャズをバックに流しながらほとんどセリフを排除してひたすら役者の表情やアクションだけで物語を語って行く様が見事。SEX、暴力、虚無感、そして汗と炸裂する若さがギラギラと入り混じった映像に圧倒されてしまう。見事な作品でした。監督は蔵原惟繕。
主人公がカフェでスリを働こうとするが見つかってそのまま少年鑑別所に送られる。そして刑期を終えて出て来た主人公は友人二人と浜辺へやって来たところで、スリを咎めて見つけられた男とその恋人に出会う。
主人公はこの二人を襲い恋人をレイプして去る。しかし、何事もなかったように振る舞われ、主人公たちとも出会い、絡み合いながらの物語が繰り返されて行く。
ギラギラ光る太陽が照りつけ、超クローズアップと長回し、手持ちカメラ風の大胆な動きで若者たちのどこか殺伐として空気感を描いて行く。背後にジャズがひっきりなしに流れ、虚無感さえも見え隠れする映像作りが本当に素晴らしい。
最後は主人公の友人の女も、レイプした女も妊娠し産婦人科で会うが、本来のカップルになろうぜと主人公が女を交換してエンディング。圧倒である。こういう日本映画もあったのだとまさに圧倒されてしまった。