くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「レミングスの夏」「星空」「デ・パルマ」

kurawan2017-11-21

レミングスの夏」
原作が相当に良くできているのだろう。話はかなり面白いし、どんどん胸に迫って来るものがある。唯、残念ながら、メインキャストの演技が下手くそなのと、演出が稚拙なために結局自主映画に毛が生えた程度の仕上がりになったのがなんとも勿体無いし、残念な映画でした。

小学校の頃、仲の良い一人の少女が変質者に殺される。当時の友達五人は、当時少年法で守られた犯人に復讐するために六年間その男を監視し、犯罪を犯そうとする寸前で警察に逮捕させるための計画を実行する。

物語は主人公たちの少年が何を実行しようとしているのか、どうやって実行するのか、それぞれの行動の理由は何か、と次々とミステリーを束ねて繰り返し挿入して展開して行く。この畳み掛けが実にうまい。それは明らかに原作に頼った部分で、カメラワークも素人に近いし、全体の映画の空気は素人色なのですが、ストーリーの面白さに最後まで見てしまうのです。

結局、見事に計画は達成されて真犯人は逮捕されるのですが、それでも、どこかに甘酸っぱいような青春の一ページが見え隠れしてたまらなく切ない。

作品としての出来栄えは決して良くないのですが、物語はしっかり心に残りました。原作を読んでみたい映画です。


「星空」
とってもファンタジックで綺麗な映画だった。まるでディズニーの「メアリー・ポピンズ」を見ているような夢の世界に展開するあまりに甘酸っぱい青春ラブストーリー。CGはこうやって使わないといけないと思う。秀作ですね。こういう映画大好きです。監督はトム・リン。

主人公シンメイがおじいちゃんに電話をしているシーンから映画が始まる。幼い時から、辛いことがあるとおじいちゃんに電話をして出かけたりしていたのだ。駅の待合室でシンメイが待っている。時刻表が動く。やがて雪が駅の中に降って来る。すごくファンタジックなオープニングにまず驚かされます。

シンメイの両親はいつも喧嘩ばかりで、どう見ても間も無く離婚という空気である。孤独なシンメイはある夜窓から外をみると、向かいの窓でリコーダーを吹く少年を見つける。間も無くして一人の少年がクラスに転校してくる。彼の名前はユージエ、リコーダーを吹いていた少年である。

いつもスケッチブックを持って一人帰るユージエをシンメイが追いかける。いつの間にか気になって仕方なくなるシンメイ。一方、シンメイに気があるクラスの少年はユージエをいじめたりする。その中でどんどんシンメイとユージエは親しくなってくる。

ある時、おじいちゃんが入院、その見舞いに行くシンメイの後におじいちゃんが作った木彫りの巨大な像が付いて来たりするファンタジックなシーンもある。そして間も無くおじいちゃんは死んでしまう。

ある夜、両親が離婚する旨をシンメイに話す。一方のユージエの父親はユージエに暴力を振るうために母親が連れ出して引っ越してきたのだった。しかし、父親に見つかったようで、また次の地へ引っ越すことになる。

シンメイは母親が芸術を勉強してパリにいたことがあるので、絵のジグソーパズルをよくみんなでしていたが、両親の仲が悪くなっていつも一人でパズルをしている。そしてゴッホの星空のパズルをしているときに両親の関係がギクシャクし、やけになったときに壊したパズルの一箇所を紛失しまった。

ユージエとパズル店に行くが、ピースのみの販売はしていないと断られる。これがラストの伏線になる。

シンメイはユージエを誘っておじいちゃんの住んでいた森の奥の小屋に行くことにする。二人が電車に乗ると、電車が浮かび上がって夜の街を飛ぶシーンが幻想的である。

二人は森で道に迷い、山小屋で一夜を過ごす。そして、なんとかおじいちゃんの家にたどり着くが、シンメイは熱が出て倒れてしまう。

目がさめると、シンメイは病院にいて、傍に母親がいる。ユージエは引っ越していて、もはやいない。それから数年、シンメイはパリにいた。母親は別の男性と結婚し娘がいてパリにいる。その子供の相手をしているシンメイは、ふとジグソーパズルを売る店に立ち寄る。

そこのあるパズルは、どれも一ヶ所ピースがない。「何かお探しですか」の声にシンメイの顔に笑みが浮かんで映画が終わる。果たしてこの店の主人がユージエなのかはわからないのだが、このラストがとっても素敵。

影が怪獣になったり、ドアの隙間から金魚を見たり、テクニックで見せる映像の特殊カットがとっても素敵でファンタジックなのがこの映画の特徴で、本当に美しい。これは絵の才能がないとできない映像だなと思える映画で、こういうのを作って見たくなりました。楽しかった。


デ・パルマ
ご存知、ブライアン・デ・パルマ監督のドキュメンタリー。監督自らが語る自作の単勝の物語を次々と描いて行く。

敬愛するヒッチコックに言及したり、ハリウッドシステムへの不満、スピルバーグなど盟友への賛辞、さらに最近の映像作りに対する批判など、彼の映画への思いが語られ、それに合わせて挿入される映画の数々が本当に楽しい。

裏話という部分はそれほどないが、さりげなく彼が自分の映画で過去の名作を模倣したシーンなど出るとニンマリしてしまいます。

ファンとしては見てよかったし、また彼の作品を見直してみたくさせてくれる映画でした。