くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「まともな男」「高校生ブルース」「新高校生ブルース」

kurawan2017-12-13

まともな男
アメリカや日本ならもっとコミカルに描いて行くのだろうが、ひたすらうっとうしいほどに姑息に描いて行く展開がなんとも不快感だけが残る映画だった。いわゆる、1人の小市民な男が、自分の保身のためにただただ嘘を積み重ね深みにはまって行く物語が不快。監督はミヒャ・レビンスキーというスイスの監督である。

主人公トーマスが、酒で同僚の車にぶつかり聴取されているシーンから映画が始まる。すでに倦怠期を迎えている妻と娘のジェニーを連れてスキーに行くことになるトーマスだが、上司の娘ザラを頼まれて、一緒に連れて行くことになる。

スキー場でジェニーとザラは小屋の管理人の息子セヴィに誘われパーティに行くが、トーマスが迎えに行くと、ザラがセヴィにレイプされたという。しかしジェニーは彼女は尻軽ですかないと嫌うのだ。

このことが上司の耳に入ってはいけないと思ったトーマスは、ひたすら穏便にしようと考える。さらに上司から仕事のことも依頼され、ますます、このことを隠そうとする。

ここからのトーマスが、とにかく姑息の極みで、どんどんこの男を不快に思い始めるのだ。

ところがふとしたはずみでザラが転落してケガをし、意識が戻ったものの記憶をなくしてしまう。あとはザラの日記だけを隠そうとしたトーマスだが、今度はセヴィがジェニーにも近づいているように思い始めセヴィを訪ね殴り倒す。そこへ駆けつけた父親に、警察に通報すると言われ、セヴィらの車を追いかけたトーマスはぶつけて谷底に突き落とす。

何事もなかったようにトーマスと妻とジェニーが帰路について映画が終わる。まったくもって、このトーマスの潔さがまったくない態度と、どんどん嘘が嘘を重ねる陰湿さがたまらない一本で、これは国柄のせいでしょうね。本国では大ヒットだったらしいがどうも受け入れられない映画だった。


「高校生ブルース」
15歳の関根恵子衝撃のデビュー作。もう恋愛なんてしたくないなと思わせるほどに、ひたすら陰湿なドラマ仕立てになっている。青春映画とは思えないまったく爽やかさのかけらもない絵作りはまさに大映色であるのかもしれません。

高校生の美子と昇は相思相愛の恋人同士。ある日、美子は自分が妊娠していることに気がつく。そして昇に打ち明けるのだが、昇は堕胎するように頼む。

確かに身勝手な展開であるが、物語はこの冒頭部から始まり、美子がいかに苦悩し、いかにSEXを憎み、いかに男女の恋愛のあり方に疑問をもって行く様をどんどん陰湿な展開で掘り下げて行く。

母の恋人も憎み、昇には自分を踏みつけて流産するように仕向け、人殺し呼ばわりをする。硫酸を盗み、母の恋人が描いた絵にかける。そして自らも手で硫酸に触れて火傷し、その姿で学校へ登校して映画が終わる。

惜しげも無く裸体を見せる関根恵子を始め、当時なら成人映画扱いレベルの裸が出てくるあたり、まさに末期の大映の姿かもしれない。

ひたすら暗い青春映画、でも関根恵子はここから女優として成功して行くのだから、その価値は十分にある一本だと思います。


「新高校生ブルース」
こちらは割とコミカルで明るい空気感が爽快な映画でした。どちらかというと三人組の男子学生中心に物語が展開するせいだろうと思います。例によって、やたら裸は出てきますが、全体に健康感が漂う。もちろん、時代が時代だけに、今の高校生より10年老けた考え方と10年幼い精神年齢がなんとも奇妙ですが、これも時代色でしょうね。

三人の男子高校生が学園祭までに童貞を失うという目標を掲げて女性にアタックを始めるがなんとも失敗ばかり。

風俗に行くも適当にあしらわれ、みじかなクラスメートにも適当に扱われる。しかしそんな中、次第にそれぞれがそれぞれの毎日の中で少しづつ成長し、大人になって行く。

その成長の物語が実に清々しくて、ラストは素直に微笑ましく感動してしまいました。学生服姿の水谷豊がまた初々しいし、関根恵子はちょっとぽっちゃり、でも、今と違った自由な空気感がよく出ていたと思います。